米アラスカ州元知事のサラ・ペイリン氏は、NYタイムズの論説によって名誉を傷つけられたと訴えている(22年8月)=AP

【ニューヨーク=清水石珠実】米アラスカ州元知事のサラ・ペイリン氏が、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の論説によって名誉を傷つけられたと訴えていた裁判を巡って、米連邦控訴裁判所が差し戻しを命令したことが29日までに分かった。

連邦地方裁判所は2022年、NYT側にペイリン氏の名誉を傷つける明確な意図があったと証明できなかったとして、棄却する判断を下していた。

控訴裁判所は28日、地方裁判所での手続きが不十分だったというペイリン氏側の訴えを認めて、審理を下級審に差し戻した。今後、地方裁判所が審理をやり直す。

ペイリン氏が問題としているのは、NYTが2017年に掲載した論説だ。ペイリン氏の言動と議員を狙った銃乱射事件を関連づける記述があったが、実際に犯人がペイリン氏の言動に影響を受けた証拠はなかった。NYTは追って訂正を出した。

問題となった一文を加えた編集担当者は裁判で「ただの間違いだった」と証言した。ペイリン氏側は同氏に敵意を抱き、おとしめる意図があったと主張した。

裁判は、報道機関が意図せず流した間違いに対して名誉毀損を問えるかを判断する珍しい判例になる可能性があり、注目されていた。

ペイリン氏は08年の大統領選で、共和党の副大統領候補だった。

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