Nstockの宮田昇始代表は「スマートHRの連結対象から緩やかに外れていく方向」と話す

株式報酬を管理するクラウドシステムを手掛けるNstock(エヌストック、東京・中央)はベンチャーキャピタル(VC)を引受先とする第三者割当増資で30億円を調達した。上場企業向けの機能開発やスタートアップが発行している未上場株の売買を仲介する「セカンダリー事業」に投資する。2025年夏をめどにサービスを始める。

第三者割当増資はWiL、コーラル・キャピタルなどVC5社が引き受けた。エヌストックは人事労務ソフトを手掛けるSmartHR(スマートHR、東京・港)創業者の宮田昇始氏が、同社の全額出資子会社として22年に創業した。従来は親会社からの貸し付けにより事業資金を賄っていた。初めてVCからの資金調達に踏み切り、経営の独立性を高める。

足元では発行済み株式の6割以上をスマートHRが持つが、近く普通株式を宮田氏に割り当てる取引を実施する予定だ。大きな事業シナジーを見込みにくいことから「スマートHRの連結対象から緩やかに外れていく方向」と宮田氏は説明する。

現状の主力サービスはストックオプション(株式購入権)を管理するシステムで、購入権の発行や契約書の締結、社員向け研修をオンラインで支援する。月額10万円から提供し、顧客のほとんどが未上場企業だ。今後は顧客企業が上場した後に権利行使を効率化できる機能やインサイダー情報のチェック機能を開発する。

未上場株のセカンダリー事業は創業者、役職員、VCなどの既存株主が売り手となり、他の既存株主や新規に入ってくるVCなどの買い手に譲渡できる仕組みを検討している。ストックオプションに付いている潜在株式も買い取り対象とし、スタートアップが新規株式公開(IPO)を急がずに最適な資本政策を進めやすくする。

エヌストックは取引が成立した際に売り手から手数料を得る予定だ。宮田氏は「年間2〜5社の顧客獲得を目指したい」と語る。このほか、調達資金はIPOなどで資金を得た個人のスタートアップ株式への再投資を促すサービスの検証にも充てる。

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