王子ホールディングス(HD)は11日、国内で保有する森林約18.8万ヘクタールが持つ経済価値が年間約5500億円に上るとの試算を発表した。水質改善など様々な機能を経済的に評価した。投資家らが企業を評価するための情報としての「自然資本」への関心の高まりを受け、価値の見える化を進める。
王子HDは国内外で東京都の面積の約3倍に当たる約63.5万ヘクタールと日本の民間企業で最大級の社有林を保有する。このうち国内の社有林について、林野庁の評価手法に基づき評価した。森林の土壌が雨水をためこみ、河川に流れ込む水の量を平準化したり水質を良くしたりする「水源涵養(かんよう)」の価値が年2040億円、土砂流出や崩壊防止の価値が年2750億円に上るなどとした。
今後は北海道大学やスタートアップ企業と協業で森に設置したセンサーやドローン、人工知能(AI)などを駆使し生物多様性を見える化するなど同社独自の自然資本の評価モデルづくりを目指す。
同日、東京都内で会見した王子HDの磯野裕之社長は「(自然資本の)価値を定量的に把握し最大化を図っていくことで、今後世界的に標準化されていく自然資本会計に対応していく」と述べ、評価法の確立を通じ各国で議論が進む同会計のルールづくりへの関与にも意欲を示した。
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