日本製鉄は11日、米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡る全米鉄鋼労働組合(USW)執行部との交渉の過程を公表した。対面やメール、電話などでの主立ったやり取りは32回に及んだ。日鉄はこれまでUSW執行部とのやり取りを詳細には明らかにしてこなかったが、誤った情報が流布されていることなどを受けて公開に踏み切った。

日鉄は「USWとのやり取りの事実を理解いただく一助となることを願う」などとコメントした。公表された英語のウェブサイトには、日鉄がUSWの求めに応じて書類を何度も提出し、USW側と面談を求める催促を繰り返すといった過程が時系列でまとめられている。

同ウェブサイトによると、3月7日の会談時には、USWが会談前から事前準備したとみられる「進展はなかった」というプレスリリースを会談直後に組合員に送付していた。

7月に日鉄の森高弘副会長兼副社長とUSWのデービッド・マッコール会長らが会談した時には、USWは日鉄側が改善すべき項目のリストを作ると約束した。森氏がお礼などのメールをマッコール氏に送ると、数日後の返信でマッコール氏は過去のUSWのプレスリリースをまとめて送る形で取引を改めて非難した。

USWは日鉄の発表当初から買収計画に反対してきた。85万人の組合員で構成するUSWは米大統領選の激戦区での影響力を持つ。両大統領候補は組合員からの支持を狙い、買収計画に慎重な発言などを繰り返してきた。欧米メディアは、バイデン大統領が買収計画に対して中止命令を出す方針だと報じている。

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