オンワードHDはウィゴーの自社EC拡大や海外進出を進めていく
  • 【関連記事】オンワード、「WEGO」を完全子会社化 Z世代取り込みへ

オンワードホールディングス(HD)は現在20%強を出資するカジュアル衣料の「WEGO」を運営するウィゴー(東京・港)を完全子会社化すると発表した。9月27日に残りの全株式を取得する。今回の取得額は5億円。若年層向けに強みを持つウィゴーにDX(デジタルトランスフォーメーション)投資などを進め、売上高を500億円規模に伸ばすことを目指す。

オンワードHDは2023年5月にウィゴーと資本業務提携し、20.27%を出資する株主となった。9月27日にファンドやウィゴーの園田恭輔社長らから残りの株式を買い取り、完全子会社とする予定だ。

オンワードHDの保元道宣社長はウィゴーの売り上げ拡大に意欲を見せる

完全子会社化で、ウィゴーのEC(電子商取引)強化や海外進出を進める。オンワードHDの保元道宣社長は「EC分野に大きな伸びしろがある」と指摘する。ウィゴーのEC売上比率は24年2月期で2割ほど。収益性の高い自社ECに限ると全体の4%にとどまる。一方でオンワードHDは売り上げの3割がECで、自社ECがその大半を占める。

オンワードHDはオンラインとオフラインを融合した「OMO戦略」を進め、ECで商品を店頭に取り寄せて試着・購入できるサービスなどを提供。ウィゴーの店舗では中高生が土日に買い物に来る姿が目立つ。オンワードHDの知見を生かして学生が忙しい平日はECで接点を作るなど、OMO戦略を進めていきたい考えだ。

気温が高く国民の平均年齢が若い東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心にアジア進出も進める。

WEGOのインバウンド(訪日外国人)売上高比率は原宿本店(東京・渋谷)で46%、大阪・心斎橋の複数店舗では半分を超える。全面におにぎりなどのイラストが描かれた総柄Tシャツや収納が充実していて推し活需要などを捉えた「痛バッグ」といったヒット商品も生み出しており、同社の企画開発力とオンワードHDの営業ネットワークをあわせて海外進出を本格化する方針だ。

保元社長は「長期的には500億円規模のグローバルブランドに進化させることが十分可能だと考えている。成長のための投資をグループ全体として実行していきたい」と話し、ウィゴーには取得額を含め最低100億円を投資する方針を明らかにした。オンワードHDは25年2月期から27年2月期までの3年間で最大700億円規模の成長投資を計画している。

ウィゴーは1994年創業。軽衣料や雑貨などに強みを持ち、10〜20代の「Z世代」を中心とする若年層が主な顧客だ。顧客層が30〜60代中心で百貨店などに展開するオンワードHDとは補完関係があり、シナジー(相乗効果)創出を見込めると判断した。

オンワードHDにとってもウィゴーのSNSマーケティングのノウハウ獲得につながるほか、同社の顧客が将来オンワードHDの他ブランドへと流入することなども見込む。両社の登録会員数(2024年2月末時点)はオンワードHDで約530万人、ウィゴーは約340万人を有する。単純計算で計約870万人となり、オンワードHDが31年2月期の目標として掲げる会員数である1000万人に大きく近づくことになる。

23年5月の出資後、オンワードHDは人員の派遣やノウハウ共有などを通してウィゴーの業績改善を進めてきた。ウィゴーの24年2月期の売上高は283億円、営業損益は4400万円の赤字だったが、25年2月期には売上高約300億円、営業損益は5期ぶりの黒字転換を見込む。

(米田百合香)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。