米紙ワシントン・ポストなど複数の米メディアは13日、バイデン政権が日本製鉄によるUSスチール買収に対する判断を11月の大統領選以降に先送りする可能性があると報じた。買収に慎重なバイデン大統領の姿勢は変わっていないものの、経済界や政権内に広がる反発に配慮したという。
買収計画を巡っては、対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上の懸念がないか審査している。ロイター通信によると今月23日の審査期限を90日間延長する可能性もあるとしており、その場合、判断は大統領選以降にずれ込むことになる。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官は13日の記者会見で「大統領はCFIUSの勧告を待っている。時間がかかっているのは承知しているが、彼らは独立した機関だ」と述べ、CFIUSの審査を見守る考えを示した。
欧米メディアは4日、事情に詳しい関係者の話として「バイデン政権が買収阻止を近く正式発表する方針」と一斉に報じていた。USスチールが本社を構えるペンシルベニア州は大統領選の激戦区。全米鉄鋼労働組合(USW)が買収に強く反発しており、バイデン氏に加え、民主党候補のハリス副大統領、共和党候補のトランプ前大統領も買収に難色を示していた。
これに対し、USスチールは4日の声明で「数千人もの組合員の雇用を危険にさらす」と反発。買収破談となれば同州ピッツバーグから本社を移転する可能性があるとも示唆していた。
日米の経済界からも「政治的圧力が審査に不当に影響を与えてはならない」と不満が広がっており、国務省や国防総省など米政府内からも買収反対に異論が出ている。こうした事情もあり、CFIUSの審査は長期化を余儀なくされている状況だ。
日鉄は2023年12月にUSスチールを141億ドル(約2兆円)で買収する計画を発表。市場では「USスチールの経営再建につながり日米の経済安全保障にも資する」などと評価されていたが、外国企業による米製造業を代表する名門企業の買収に米国内で波紋が広がっていた。【ワシントン大久保渉】
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