「都道府県地価調査」は、毎年7月1日時点の全国の土地の価格を都道府県が調べるもので、国土交通省は2万1400あまりの地点の結果をまとめ、17日、公表しました。

それによりますと、東京、神奈川、埼玉、千葉の広い範囲と茨城の一部を含む「東京圏」の地価の平均は全体で去年より4.6%上昇し、上昇率は4年連続で拡大しました。

用途別に見ると、住宅地は平均で3.6%上昇しました。

郊外も含めた広い範囲で住宅需要が堅調で、特に都心部では海外の富裕層などによる取引が活発で大きく地価が伸びています。

商業地は平均でプラス7.0%となり、12年連続の上昇です。

東京 台東区浅草 旅行者増加で25.0%上昇

なかでも東京・台東区浅草では、海外を含めた旅行者の増加で、出店需要が高まり、調査地点のひとつでは去年より25.0%上昇しました。

コロナ禍と比べ働く人の出社する頻度が増えたことで都市部を中心にオフィス需要が高いほか、再開発が進む地域では、新たなにぎわいが生まれる期待感から地価の上昇が続いていて、その流れは郊外へも波及しています。

埼玉 草加 マンモス団地リニューアル 周辺で7.8%上昇

埼玉県内では832地点の結果が公表され、住宅地ではかつて「東洋一のマンモス団地」とも言われた団地がある埼玉県草加市で地価が7%余り上昇しました。子育て世代の呼び込みに力を入れたリニューアルが進んだことなどが影響しているとみられます。

都道府県地価調査の結果によりますと、県内の地価の平均は、
▼住宅地で1.6%
▼商業地で2.7%
▼工業地で2.8%、それぞれ上昇しました。

このうち住宅地では、上昇率の上位10地点は、去年は都心に近い川口市がすべてを占めていましたが、ことしは草加市松原が2位に入り、地価は、去年1平方メートルあたり18万円でしたが、ことしは19万4千円となり7.8%上昇しました。

この調査地点の近くには、昭和30年代の後半に多くの賃貸住宅が建設され「東洋一のマンモス団地」とも言われた「草加松原団地」がありましたが、建物の老朽化や住民の高齢化が課題となっていました。

団地を管理するUR都市機構は地元の草加市などと連携してこの20年ほど子育て世代の呼び込みにも力を入れて団地全体のリニューアルを進めています。

かつて賃貸マンションだった敷地の一部を売却して子育て世代向けの分譲マンションの建設が順次、進められているほか、戸建て住宅のエリアも設けられました。

また大きな公園が新たに設けられたほか去年、複合商業施設や年中無休の小児科の診療所なども誘致しました。

調査にあたった不動産鑑定士の三田和巳さんは「埼玉県内では比較的割高なJR沿線の土地と比べると、草加市は値ごろ感があることに加え、団地で今後も続く開発への期待感から周辺の地価が上昇したとみられる」と話しています。

千葉 流山 子育て世代流入で10%超上昇

あわせて884地点が調査対象となった千葉県内は、「住宅地」「商業地」「工業地」のすべてで去年より上昇し、特に住宅地では県内の半数以上の自治体で上昇していて、全国で4番目の上昇率となっています。

このうち去年から継続して調査している地点で価格が上昇したところは、県内全体で40か所近く増加して573か所となりました。

東京に近い地域や千葉市、成田市、木更津市などを含む「東京圏」と、県東部や南部の「地方圏」のいずれでも、1年前と比べて上昇した地点が去年の調査よりも増えました。

住宅地では、ローンの低金利が続いていることや共働き世帯が増えていることなどから「東京圏」を中心に子育て世代の流入が目立ち、流山市ではプラス10%を超えるなど全体を押し上げ、県全体の平均の上昇率はプラス3.2%と全国で4番目に高くなっています。

また、商業地ではコロナ禍が一段落しインバウンド需要が回復していることなどから成田空港周辺で上昇傾向が顕著で成田市でプラス6.8%、隣の富里市でプラス4.1%と去年の上昇率を大幅に上回り、県全体の平均の上昇率は5.0%となっています。

調査にあたった県地価調査鑑定評価員の高松芳壮さんは、「円安環境が続いていて、インバウンドを含めた景気の回復や収益性の向上などが見込めるほか、低金利政策も下支えとなって全体的に上昇した。急激な金利の上昇がない限り今後も堅調に推移するものとみられる」と話しています。

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