世界の半導体大手10社の2024年4〜6月期の合計純利益は368億ドル(約5兆2000億円)と、前年同期の2.4倍に増えた。同期間として6年ぶりに過去最高益を更新した。米エヌビディアが画像処理半導体(GPU)の特需を捉え、全体の利益の45%を稼いだ。AI向けメモリーを手掛ける企業の業績も改善した。
QUICK・ファクトセットを使い、主要10社の4〜6月期(一部は3〜5月期や5〜7月期)決算の数値をドルベースで集計した。前年同期に比べて損益が改善したのは7社だった。合計売上高は33%増の1587億ドルだった。
利益増をけん引したのがエヌビディアだ。純利益は2.7倍の165億ドルだった。データセンター向けの売上高は2.5倍に伸び、売上高全体の9割を占めた。
AI半導体で2番手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)も純利益が9.8倍の2億6500万ドルに伸びた。リサ・スー最高経営責任者(CEO)は7月末の決算会見で「AI半導体の新製品により、利益が大幅に増えた」と語った。
GPUと合わせてAI半導体に搭載される大容量メモリー「HBM」の需要も高まっている。最大手の韓国SKハイニックスの4〜6月期最終損益は30億ドルの黒字と前年同期(22億ドルの赤字)から改善した。AI需要が業績を押し上げスマートフォンやパソコンの需要回復の遅れを補った。SKのHBMは25年の出荷分まで売り切れだという。
世界半導体市場統計(WSTS)によると、24年の半導体市場は前年比16%増と2年ぶりに拡大する見通し。メモリーが77%増と急回復する。韓国サムスン電子は4〜6月期として2年ぶりに増益に転じ、純利益が6倍に増えた。主要10社の純利益に占めるメモリー3社の比率は約3割を占めた。
一方、米インテルは最終損益が16億ドルの赤字(前年同期は14億ドルの黒字)だった。最終赤字は2四半期連続だ。半導体の開発競争で他社に後れを取り、21年に参入を発表した半導体の製造受託事業でも投資が先行している。
パット・ゲルシンガーCEOは会見で「収益は期待通りに伸びておらず、AIの恩恵を十分に受けていない」と述べた。16日には半導体の受託生産(ファンドリー)事業を分離し子会社にすると発表した。将来の外部資本受け入れを視野に入れる。
電気自動車(EV)の販売鈍化も響く。米車載半導体大手の米テキサス・インスツルメンツ(TI)の純利益は35%減の11億ドルで、4〜6月期として7年ぶりの低さになった。米テスラなどに電圧制御用の半導体を供給するスイスのSTマイクロエレクトロニクスも純利益が65%減の3億5300万ドルとなった。
AI向け需要は力強く、半導体企業全体の業績は24年7〜9月期も拡大が続きそうだ。主要10社の合計純利益(市場予想平均)は451億ドルと、前年同期の約2倍が見込まれている。
エヌビディアの純利益は86%増の172億ドルと予測され、四半期ベースで最高益を更新しそうだ。台湾積体電路製造(TSMC)もAI半導体の受託で業績を伸ばし42%の増益となる。SKやマイクロンも最終黒字に転換する公算が大きい。
米IDCは24年の自動車向け半導体の市場成長率を1桁台前半の伸びとし、年初の6%増から下方修正した。同社で半導体を担当するヘレン・チェン氏は「車載向けの本格的な回復は早くても25年以降とみられ、当面はAIが半導体の成長の鍵をにぎる」とみる。
(向野崚)
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