原子力対策特別委員会後、記者の質問に答える玄海町の脇山伸太郎町長(25日、佐賀県玄海町)

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査の受け入れを求める請願が佐賀県玄海町議会に提出され、26日の本会議で採択される見通しとなった。本会議に先立って採択した25日の原子力対策特別委員会では、委員から「原発の立地自治体として避けて通れない」などといった賛成意見が相次いだ。

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同町が請願通りに文献調査を受け入れるかどうかは、脇山伸太郎町長の判断に委ねられる。玄海町には九州電力玄海原発があり、受け入れを決めれば、原発立地自治体としては初となる。

町長は特別委員会終了後、記者団の取材に「住民に理解してもらう時間が必要だ。判断は5月の連休明けにならないとできない」と述べるにとどめた。住民投票の形で民意を探る考えがあるか問われると、「判断を他に委ねることは考えていない」と否定した。

請願を提出したのは、玄海町の旅館組合と飲食業組合、建設関連の防災対策協議会の3団体。請願では「新型コロナウイルス禍や廃炉による原発作業員の減少が経営に打撃となっている」と訴えている。

そのうえで、立地自治体の「責務」として調査受け入れで国の政策に協力すべきなどと訴えた。委員からは「議論を呼び起こすのは大事だ」などと賛成意見が相次いだ。

論点の一つとなったのが、文献調査の受け入れにあたり、町内での最終処分場の建設までを視野に入れているかどうかだ。選定プロセスは文献調査から始まり、概要調査、精密調査と3段階がある。

慎重派の委員から「すべて順調に進んだときの覚悟があって手を挙げるのか」と問われ、「全国で最も適した場所だと国から話があれば検討しなければならない」「そのときの世代が議論して受け入れると決めればそうなる」と複数の委員が応じる一幕もあった。

一通り意見が出つくした後で、岩下孝嗣委員長が採決を決断。委員長を除き、賛成6、反対3の賛成多数で請願を採択した。

町議会は26日午前10時から本会議を開く予定。特別委は10人の町議全員で構成されているため、本会議でも請願が採択されるのは確実だ。4日付で請願を受け付けてから約3週間で町議会の意思を示すことになる。

玄海町の文献調査受け入れを巡っては、佐賀県の山口祥義知事が「(最終処分場という)新たな負担を県内で受け入れるつもりはない」と早々に否定的な考えを示すなど、県内外ですでに議論を呼んでいる。人口5000人弱の町が投じた一石は決して小さくない。

(福島悠太、長谷川聖子)

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