大丸心斎橋店は5年ぶりの大規模リニューアルで関西初進出のブランドを多く集めた(大阪市中央区)

日本百貨店協会(東京・中央)が25日発表した8月の売上高実績によると、大阪地区(10店舗)は前年同月比8%増の708億円だった。35カ月連続で前年を上回ったが、7月まで19カ月続いていた2桁増収から伸び率は鈍化した。外国為替市場で円相場が上昇し、インバウンド(訪日外国人)客の購買意欲がやや減退したことが影響した。

全国の8月の売上高は4%増の4034億円。関西の都市では京都(5店舗)が6%増の185億円、神戸(4店舗)が4%増の108億円だった。全国10都市で2桁増収を確保したのは札幌(5店舗、12%増)のみ。東京(22店舗)も7%増にとどまった。

背景にあるのは百貨店の売り上げ増をけん引してきたインバウンド需要の伸びの鈍化だ。8月に円相場が1ドル=140円台と9カ月ぶりの円高・ドル安水準となったことで、インバウンド客の中で、円建ての商品の割高感が意識されたとみられる。

大阪の百貨店では美術・宝飾・貴金属といった高額品の売上高が20%増となった。近鉄百貨店で富裕層向けの外商を統括する吉川和男常務執行役員によると「国内の30〜40代の若年富裕層の購買意欲が高まっている。特に金(ゴールド)を使った製品の引き合いが多い」という。

6月の欧州に続いて、米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)も近く利下げに踏み切るとの観測が高まっていた。そうした中で利息の付かない金に対する相対的な買い意欲が強まり、相場も上昇していた。世界景気の先行き不透明感から株価などが下落する中、資産として金製品を買い求める動きもあったようだ。

実際にFRBは9月中旬に4年半ぶりとなる利下げを決めた。日米の金利差の縮小が意識される中、当面は円高・ドル安に振れやすい地合いが続くとみられる。百貨店にとって国内客の消費をどう喚起するかが成長を維持する上での大きな課題となる。

24年秋に本館建て替えから5周年を迎える大丸心斎橋店(大阪市)は大規模リニューアルに着手している。25年2月までにオープンする66店舗のうち、半数が新規出店となる。

米国発のストリートファッションブランド「AMIRI」の関西初店舗や、アルゼンチン発の香水ブランド「フエギア1833」などが目玉となる。このほか寝具ブランド「日本橋西川」の店舗は最新のデジタル機器を備えた体験型のショールームを導入する。国内客の来店を促す店づくりも欠かせない。(安藤健太)

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