米東部ノースカロライナ州の石炭火力発電所=AP

【ヒューストン=花房良祐】バイデン米政権は25日、米国の火力発電所の温暖化ガス排出量を2032年から90%削減する規制を導入すると発表した。既存の石炭火力発電所と新設の天然ガス火力発電所は二酸化炭素(CO2)回収・貯留装置(CCS)を設置する必要がある。米国で火力発電の減少が加速しそうだ。

米環境保護局(EPA)が25日、発表した。米国政府が発電所の排出規制に踏み込むのは初めて。火力発電所にCCS導入を義務付けるのは世界でも珍しい。

米国の発電量の2割弱を占める石炭火力については、①2039年以降も運転予定なら32年から排出の90%を回収・貯留する、②38年までに稼働停止するなら32年から天然ガスを40%混焼する――といった対応を求める。

4割強と米国の電源構成で最大比率を占めるガス火力については、既存の発電所を規制の対象外とした。

一方、新設のガス火力については、常時稼働する基幹電源(ベースロード)の発電所は32年から排出の90%を削減する必要があり、建設計画が減少しそうだ。需要が急増する時間帯だけ稼働する発電設備(ピーク電源)は規制の対象外で、安定供給に配慮した。

業界団体のエジソン電力協会は「CCSはまだ経済性がなく、導入する段階にない」と批判したほか、野党・共和党も反発している。法廷闘争に発展する可能性もある。

米国で運転コストの高い石炭火力はガス火力や再生可能エネルギーとの競争に押されて減少傾向にあった。CCS装置は最低でも数百億円の投資が必要で石炭火力の廃止は加速する見込みだ。

一方、シェール革命を受けて安価な天然ガスが大量に生産されたためガス火力は増加していたものの、今回の排出規制を受けて頭打ちになりそうだ。

発電部門は米国の排出量の約3割を占める。バイデン政権は再生エネや原子力発電、蓄電池などの導入を促進して35年までの同部門の排出ゼロを目指している。CO2の回収・貯留については1トンあたり85ドルの支援策を導入して普及を後押ししている。

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