ENEOSは合成燃料の生産設備を稼働させた(横浜市)

ENEOSホールディングス(HD)は28日、化石燃料に比べて環境負荷の小さい「合成燃料」の生産を始めたと発表した。より大規模で効率的に生産するための課題などを洗い出すための実証生産との位置づけで、2040年までの商業化をめざす。

中央技術研究所(横浜市)内に生産設備を建てた。生産能力は1日あたり1バレル。水を再生可能エネルギー由来の電気で分解した「グリーン水素」と二酸化炭素(CO2)を反応させ、原油に近い「合成粗油」を生み出す。それを炭素数に応じて合成ガソリンや再生航空燃料(SAF)に分ける。

研究所の敷地内にグリーン水素を製造する装置のほか、空気からCO2を回収する機器を設けた。同じ拠点内で原料から合成燃料を一貫生産するのは国内で初めてだという。実証生産を通じて反応工程での性能を高めるほか、生産コストをどう下げられるかを検証する。

合成燃料は原料にするCO2と燃やした際に出るCO2が相殺されるとの考え方に基づき、環境負荷の小さい燃料となる。合成ガソリンは既存のガソリンエンジンで使えるため、運輸部門の脱炭素手段として期待されている。

ENEOSHDは27〜28年度、生産能力を日量300バレルに高めた大型の実証設備を動かす。40年までに日量1万バレルでの商業生産を目指している。既存のガソリンに混ぜ、徐々に混合率を高めながら普及させたい考えだ。

資源エネルギー庁によると現在の合成燃料の製造コストは1リットルあたり300〜700円と、ガソリンより大幅に高い。グリーン水素をつくるのに欠かせない再生エネの発電コストがかさむためだ。

ENEOSHDの宮田知秀社長は28日の完成式典で「(生産)技術を進展させるとともに、いかに安い価格でつくれるかを徹底的に追求していきたい」と話した。

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