エスフーズは8月下旬にスンドゥブチゲを2種類発売した

近年の長引く残暑を受け、鍋つゆの動き出しが鈍っている。そこで本格的な秋の訪れまでのつなぎとして食品メーカーが力を入れるのが辛みをきかせた鍋つゆだ。エスフーズは「月見」と辛さを組み合わせた商品を発売。モランボン(東京都府中市)はたくさんの肉と味わう辛口の商品を売り出し、スタミナをつけて残暑を乗り切ろうと訴求する。

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エスフーズは8月下旬、韓国料理のスンドゥブチゲ用のスープの新シリーズを発売した。チキンブイヨンなどを使った畜肉系のスープに、熟成発酵させた韓国産の味噌のコチジャンを加えた「牛すじ入りスンドゥブチゲ」と、アサリやカツオなどの魚介だしをベースにコチジャンを加えた「ホルモン入りスンドゥブチゲ」の2種類だ。

鍋つゆの中には牛モツのホルモンか牛すじが入っていて、家庭で豆腐や野菜などを加えて煮込めばスンドゥブチゲが食べられる。いずれも参考価格は450円。

同社がスンドゥブチゲの鍋つゆを販売するのは初めて。マーケティング部の日下大輔次長は「本格的な鍋のシーズンが始まるまでは辛みのある商品の需要が高い」と狙いを説明する。

さらに暑さが続くものの、秋の訪れを感じさせる9月や10月の売り上げ増を狙い、月見商戦の要素も打ち出す。スンドゥブチゲは鍋の真ん中に生卵を落として完成する。その様子を月見に見立てるというわけだ。小売店の月見関連の売り場での取り扱いを狙う。

モランボンは鍋つゆシリーズ「コク旨スープがからむ」から8月、辛口の商品を発売した。「鬼食う肉鍋用スープ」(参考小売価格は税別350円)で、1食あたり500〜600グラムの肉を使うことが特徴だ。「肉をたくさん食べることでスタミナをつけ、残暑を乗り切ってほしい」(同社)

1食あたり500〜600グラムの肉を使うモランボンの「鬼食う肉鍋用スープ」

スーパーなどの小売店向けには、暑いなかでも鍋を食べてもらうため、「暑さを吹き飛ばせ!」といった文言と共に鍋の写真を載せた店頭販促(POP)も用意した。

リンガーハットは店舗で人気の「ピリカラちゃんぽん」を再現した鍋つゆを8月から全国の小売店で売り出した。参考価格は375円。希釈せず使えるレトルトパウチ品で、肉や野菜など好みの具材と煮込めば、リンガーハットでの味が楽しめる。スープはトウバンジャンやラー油、唐辛子の3つの辛みをきかせた。

日経POS(販売時点情報管理)データによると、8月の全国での鍋つゆの販売金額ランキングでは上位10品目のうち4品目がキムチ鍋やスンドゥブなど「辛さ」を売りにした商品が並んだ。暑さを乗り越えるために辛い味の鍋つゆで野菜や肉などをたくさん食べたいという需要は底堅い。

国内鍋つゆ市場は残暑の長期化や、野菜や肉などの具材の高騰の影響を受けて縮小傾向にある。調査会社の富士経済(東京・中央)によると、2024年の鍋つゆ市場は前年比0.5%減の432億円となる見込みだ。12年と比較すると4割伸びているが、新型コロナウイルス禍が始まった20年以降、4年連続で減少している。

気象庁によると、9〜11月の3カ月間の平均気温は全国で例年より高くなる見通しだ。今後も残暑の長期化が続くと予想されるなか、辛みのきいた鍋が鍋商戦の出足を盛り上げるのか。各社の戦略に影響を与えそうだ。

(西頭宣明)

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