去年10月1日に始まった「インボイス制度」は、消費税の納税額を正確に把握することなどを目的にした税額控除の方式で、事業者が仕入れ先などに払った消費税の控除や還付を受ける場合、「インボイス」という税率ごとの消費税額を記載したレシートや領収書が必要になりました。

インボイスを発行するには国への登録が必要で、国税庁によりますと、ことし8月末までにおよそ458万の事業者が登録しています。

「日本・東京商工会議所」がことし5月から6月にかけて調査したところ、回答のあった制度を導入した2365の事業者のうち、仕入れ先の制度への登録状況を確認するなど事務負担が増加したという事業者が82.2%に上ったほか、システムを改修するなどコストが増加したという事業者は48.8%でした。

国税庁は、事業者の事務や税負担の当面の軽減を図ろうと、消費税の納付額を2026年まで軽減する特例制度などについてユーチューブで紹介しているほか、専用のコールセンターを設けるなどして制度の周知を進めています。

国税庁軽減税率・インボイス制度対応室の濱田正義室長は「引き続き制度の丁寧な説明に努めていきたい」と話しています。

消費税納付義務を新たに負った事業者 4月末までに約160万

インボイス制度への登録は任意で、年間の売り上げが1000万円以下の小規模事業者は、登録すると、それまで免除されてきた消費税納付の義務を新たに負うことになります。

ことし4月末までに制度に登録した事業者の3分の1にあたるおよそ160万の事業者は、それまで免税されていた小規模事業者でした。

「日本・東京商工会議所」が調査したところ、回答のあった制度の導入前まで免税されていた事業者のうち、企業間の取り引きを行っている業者では、73%余りが制度に登録していて、登録しなかった事業者はその理由として新たな事務負担や税負担が発生したことなどをあげていました。

一方、一般消費者に商品やサービスを提供する事業者では、制度への登録は24%余りにとどまりました。

また、制度への登録で免税事業者から転換し新たに納税義務を負うことになった業者のうち、54.9%が減収したということです。

国は登録した小規模事業者の当面の負担を抑えるため、一定の条件を満たせばインボイスの保管が不要で納税額を売り上げで受け取った消費税の2割に抑えられる特例制度を2026年9月末まで設けています。

また、制度に登録していない事業者と取り引きする事業者についても、合わせて6年間、消費税の納付額から一定割合の控除が認められる経過措置がとられています。

“未登録事業者への不当な利益侵害に” 公取委 昨年度40件を注意

インボイス制度に関連し、未登録の事業者に対する不当な利益の侵害につながりかねない行為があったとして、公正取引委員会は昨年度40件の注意を行っています。

事業者がインボイスを発行するためには国への登録が必要ですが、年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者は、これまで免除されてきた消費税の納付義務を新たに負うことになるため、登録を見送っているケースもあります。

制度への登録は任意ですが、公正取引委員会によりますと、未登録の事業者に対し、税の控除や還付を受けられないことを理由に、取引先が一方的に価格の引き下げを要求するケースなどが確認されました。

不当な利益の侵害につながりかねないとして公正取引委員会が注意を行ったケースは、昨年度40件だったということです。

公正取引委員会は、制度を理由に不当な要求などを行わないよう引き続き呼びかけるとともに、違反のおそれがあるケースがあった場合は厳正に対処していくとしています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。