宇宙空間に漂うロケット「H2A」の部品を撮影した=アストロスケール提供

宇宙スタートアップのアストロスケール(東京・墨田)は26日、同社の人工衛星が世界で初めて宇宙ごみ(デブリ)に数百メートルの距離まで接近し画像撮影に成功したと発表した。将来の除去サービス事業につなげる。ロケットや人工衛星から派生するデブリは増加の一途で、宇宙開発の障害になりかねない。除去に関する国際的なルール作りも重要になる。

同社の人工衛星「アドラスジェイ」が撮影したデブリの画像を公開した。デブリは2009年に打ち上げられた後、軌道上を漂う「H2A」ロケットの上段部分で、全長約11メートル、直径約4メートル、重量約3トンという。

デブリは役目を終えたロケットや人工衛星の一部や破片で、計画的に近づくのは技術的に難しい。正確な位置や姿勢を把握するための信号を出しておらず、移動も秒速7〜8キロメートル程度と高速なためだ。

アストロスケールは地上で観測したおおよその位置などを基にデブリに接近し、衛星に搭載したカメラやセンサーなどの技術を駆使して距離を詰めている。5月中にも最終的に数メートルの距離まで接近することを目指す。

今回のプロジェクトは宇宙航空研究開発機構(JAXA)から受託したデブリ除去実証の第1段階となる。デブリへの接近や状態の把握が目的だ。アストロスケールは第2段階として26年度以降、人工衛星に付けたロボットアームでデブリを捕獲し、大気圏に落として除去することを計画している。

世界のデブリ監視・除去の市場規模は29年までに15億2770万ドル(約2400億円)になるとの予測もあり、同社も商機とみる。

デブリ対策は宇宙開発にとって喫緊の課題だ。欧州宇宙機関(ESA)によると、デブリの数は1ミリメートル超から1センチメートルまでのもので1億3000万個程度、10センチメートルを超えるもので3万6500個程度に上る。小さなデブリでも人工衛星などに衝突すれば、機能を喪失させかねない。

現在約9000基あるとされる人工衛星は打ち上げの増加で30年までに2万基を超えると予想されている。デブリによる衝突リスクが増大すれば打ち上げも困難になる。

各国もデブリ対策に乗り出している。米政府は任務を終えた低軌道衛星については5年以内に燃え尽きる廃棄軌道に移すことを義務付けている。一方で、デブリを排出した国に対策を強制する国際条約などはまだない。宇宙空間の環境整備に向けたさらなる議論が求められている。

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