日本のアニメは海外でも人気が高い(2019年、ニューヨーク市)=ロイター

人工知能(AI)による音声生成を手掛けるスタートアップのCoeFont(コエフォント、東京・港)は7日、大手声優事務所の青二プロダクション(同)と提携すると発表した。外国語での音声ナビゲーションなどに用途を限定しつつ、野沢雅子さんをはじめとする所属声優の声を合成できるサービスを提供する。

2020年設立のコエフォントは音声の生成技術に強みを持つ。青二プロ所属と連携し、人気アニメ「ドラゴンボール」の主人公である孫悟空役の野沢さんや、「機動戦士ガンダム」に出演した銀河万丈さんら著名声優の声をAIに学習させる。大手声優事務所が音声AIのスタートアップと組むのは珍しい。

両社が提供を始めるサービスでは、声優を指定してせりふを文章で入力すると、実際にその声優が話しているような音声を英語や中国語などで出力できる。海外でも日本のアニメを日本語音声で楽しむファンは多く、海外企業を中心に音声ナビゲーションやロボットなどでの利用を見込む。

一方、日本語での音声の出力や、海外向けのアニメ・映画の吹き替えといった演技目的ではサービスを提供しない。コエフォントは「AI音声と声優の活動領域のすみ分けを適切にする。声優の権利を守りながら、音声の可能性を広げる」と説明している。

青二プロの竹内健次郎社長は今回の取り組みについて「AI音声技術を敵ではなく、声の魅力を世界中に届けるための技術と捉えている。演者の権利を守りながら活用するため協業を決断した」とコメントした。

コエフォントが手がける音声AIサービスでは、誰でも自らの声のデータを登録して企業や個人に提供することができる。実際に声が使われると、利用料の一部を登録した権利者に還元する仕組みだ。登録者数は1万人を超え、すでに一部の著名人やナレーター、声優が利用し始めている。

音声と生成AIを巡っては米国で8月、多くの俳優が加盟する映画俳優組合―米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)がAI音声サービスの米ナラティブと契約した。俳優の合成音声を広告に利用する場合は本人の許可を必須とし、最低賃金以上の報酬を得られるようにした。9月には米カリフォルニア州で俳優の権利を守るためにAIを規制する州法が成立している。

(伴正春)

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