JX金属は半導体薄膜材料の「スパッタリングターゲット」などに事業の軸足を移す

非鉄大手のJX金属が8日、東京証券取引所に上場を申請したと発表した。現在はENEOSホールディングス(HD)完全子会社だが、上場により同社の持ち株比率は50%未満になる見通し。時価総額は7000億円を超えるとみられ、23日に上場する東京地下鉄(東京メトロ)を上回る大型上場となる。JX金属は上場を機に資源・製錬から半導体材料に事業の軸足を移す。

上場時期は2025年3〜4月の予定で、上場後のENEOSHDの持ち株比率は50%以上減り、持ち分法適用会社となる見通し。石油精製や資源開発、金属などの事業を抱えるENEOSHDにとっては市場での評価が割り引かれる「コングロマリット・ディスカウント」を解消するのが今回の新規株式公開(IPO)の狙いだ。

JX金属は半導体製造時に使う金属の薄膜材料「スパッタリングターゲット」で世界シェア6割を持つ。既存の鉱山・製錬を含む「ベース事業」から、半導体材料など「フォーカス事業」に経営資源を集中している。足元の営業利益では両事業とも数百億円規模で大差はないものの、2040年にはフォーカス事業で2000億円を目指す。拡大する薄膜材料市場でシェアを維持して成長を目指す。

実際にJX金属はチリのカセロネス銅鉱山の権益の一部をカナダ企業に売却するなどベース事業を縮小する一方で、茨城県ひたちなか市には1500億円を投じて薄膜材料の新工場を建設中だ。25年度中に薄膜材料を製造する建屋の一部で稼働を始めて、将来的には500人を雇用する。すでに数十人の雇用を始めており、北茨城市の既存工場で新規従業員向けの技術研修を進めている。

シェアの維持には設備投資や技術革新が欠かせない。JX金属幹部は「大量のものを安定供給する装置産業と、幾つも失敗を重ねながら初めて成功していく成長産業では判断の基軸が異なる」と話す。従来の資源・製錬は装置産業としてENEOSとの一定の親和性が見い出せたものの、半導体材料を中心に据える判断をしたことで独立を決め、23年5月から準備を進めてきた。

JX金属は1905年の日立鉱山の開業を源流に持ち、29年に日産コンツェルンの鉱業部門が分離独立して日本鉱業として誕生した。以後、業界再編を繰り返しながら2010年に石油元売りの新日本石油と、日鉱金属(現JX金属)を傘下に持つ新日鉱HDが経営統合したことでJXHD(現ENEOSHD)が発足した。

企業の新規上場を巡っては、東京メトロが23日に東証プライム市場に上場する予定で仮条件に基づく時価総額は6391億〜6972億円。JX金属の時価総額が7000億円以上になれば、東京メトロを上回る大型上場となる。

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