厚生労働省の職業訓練の助成金を会計検査院が調べたところ、従業員を訓練させる事業主に対し、職業訓練機関からキックバックがあるケースが見つかった。調べた事業主の約3割で、訓練費用全額を負担せずに助成金を受けていた。検査院は訓練費が水増しされていると指摘した。

 厚労省は、事業主が従業員を訓練機関などで職業訓練をさせた際に、訓練費の一部を助成している。検査院が2019年度~23年度について、113事業主の助成金計約2.8億円を調べたところ、約3割にあたる32事業主の計約1億円について、訓練機関に従業員が作文やアンケートなどを提出することで事業主に金銭の見返りがあり、訓練費の全額を負担していなかった。訓練の体験談1本で10万円のキックバックがあるケースもあった。

事業主は実質、負担なしで

 具体例では、東京労働局は23年6月、264万円の訓練をしたという事業主に188万円を助成した。ところが、事業主は6人分の感想文を訓練機関に提出し、75万円の入金を受けていた。助成金と体験談代の計約264万円となり、事業主は実質、負担なしで訓練を実施していたことになる。

 検査院は「訓練機関が『実質負担なしで訓練ができる』として営業しているケースもあった。事業主が訓練費の全額を負担していない場合は、助成としては適切ではない」とする。厚労省は「事業主と訓練機関の取引は民間同士のため、現在は取り決めがない。今後、対策を検討したい」としている。(座小田英史)

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