海中に仕掛けられたいけすから小舟に移されるトラウトサーモン=北海道根室市の花咲港沖で2024年10月9日、同市提供

 夏場でも冷涼な北海道根室市の気候を利用したトラウトサーモンの2年目の海面養殖実証試験で9日、平均体重2キロ以上に成長した約640匹が水揚げされた。前年度は夏場の高水温でへい死が相次いだが、今年度は現時点で約1900匹(生残率93%、サンプルを含む)が順調に育ち、初水揚げにこぎ着けたという。

 端境期となる年末に出荷して差別化を図ろうと更別村の「ファミリーパークさらべつ」で約1キロまで育てた幼魚2500匹を岸壁でいけす(直径14メートル、深さ5メートル)に放ち、配合飼料を約4カ月間、与えた。その結果、養殖魚は現段階で平均体重2・1キロ、最大で2・8キロまで成長したという。

 市水産研究所によると、今年度は高水温に悩まされることがなかった。9月に水温が18度を超える日が数日あったものの、高水温で弱る魚も少なく、当初計画(同90%、2250匹)以上の生残率を確保できそうな見通し。前年度は8月下旬から9月末まで高水温が続き、64匹(同2%強)しか生き残らなかったのとは対照的な結果となった。

 市内4漁協などで構成する「根室市ベニザケ養殖協議会」は、2016年のロシアによる流し網漁の禁止に伴い、水揚げのなくなったベニザケやそれに代わる魚種の海面養殖を19年度から手がけてきた。会長を務める大坂鉄夫・根室漁協組合長は「一番の敵は海水温。今年は17~18度だったが、20度以上になると昨年のようになってしまう」と海面養殖の難しさを説明し、「商業ペースにどう乗せるか知恵をしぼっていきたい」と語った。

 トラウトサーモンは比較的低温の環境を好むサケ科魚類。根室の海水温は夏場でも約18度と好条件で、端境期となる秋~冬の出荷が期待されている。【本間浩昭】

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