グループの祖業 イトーヨーカ堂

年間の売り上げが10兆円を超えるセブン&アイ・ホールディングス。

グループの祖業であるイトーヨーカ堂の株式の売却は、セブン&アイにとって大きな転換点となります。

▽イトーヨーカ堂の前身となる「ヨーカ堂」が設立されたのは、高度経済成長期に入った1958年でした。
叔父から洋品店を引き継いだ伊藤雅俊氏が創業しました。

アメリカのスーパーマーケットのビジネスモデルを参考に
▽1960年代には、衣料品に加えて食品や家庭用品の販売も始め、チェーン展開を進めていきます。

主に駅前を中心とした立地で店舗網を広げ
▽2015年度には、全国で180店舗以上を構える総合スーパーに成長しました。

その一方で、郊外に出店攻勢をかける大型ショッピングセンターや、ファストファッションと呼ばれる低価格の衣料品店などに押され業績は低迷していて
▽2023年度までの4年間、最終赤字が続いています。

こうしたことから、セブン&アイは、グループの構造改革を進めるため、
▽2023年3月に、全体の4分の1にあたる33店舗を2026年2月までに削減することを決めました。

そのうえで、スーパー事業を分離し、主力のコンビニ事業に経営資源を集中させようと、
▽2024年4月、2027年度以降にイトーヨーカ堂など傘下のスーパー事業の株式の上場を目指す方針を明らかにしていました。

ただ、食品開発の部門で、スーパーとコンビニが連携するメリットは大きいとしていて、セブン&アイとしては、イトーヨーカ堂など、スーパー事業の株式を一定程度保有したうえで、パートナーとなる企業の協力を得ながら事業の再建を図りたい考えです。

構造改革を進める中での買収提案

セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニ事業のほか、スーパーや銀行、レストランなど、複数の事業を傘下に持つのが特徴です。

幅広い販売網や独自の商品開発を強みに事業を拡大させてきましたが、近年は「物言う株主」と呼ばれる投資ファンドなどから、収益性の高いコンビニ事業に注力するよう求める声が高まっていました。

このため、
▽2023年9月に、大手デパートの「そごう・西武」
▽2024年7月には、通信販売の「ニッセンホールディングス」を、
それぞれ売却するなど、構造改革を進めていました。

こうした中、
▽2024年8月中旬、セブン&アイが、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」から、およそ390億ドル、日本円で5兆8000億円余りの買収提案を受けたことが明らかになりました。

ただセブン&アイは、買収金額について「当社の価値を著しく過小評価している」などとして、提案を受け入れられないとする内容の書簡をクシュタール社に送っていました。

そうした中、
▽10月9日に、クシュタール社が買収金額を、これまでの提案から2割程度増やし、7兆円規模に引き上げたことが明らかになりました。

買収成立への期待などを背景に、セブン&アイの株価は上昇し、9日の終値は、1株2335円と、買収が明らかになる前の8月中旬に比べて、3割余り高い水準となっています。

このため、セブン&アイとしては、グループの再編によって、経営資源を主力のコンビニ事業に注力し、経営の効率化を進めて企業価値を高めるねらいがあります。

専門家 “買収提案によって構造改革を急ぐ状況に”

流通業界に詳しい桃山学院大学経営学部の小嶌正稔教授は、セブン&アイの再編計画について、「構造改革を急がなければグループ全体が弱くなってしまうという意識が背景にあった。買収提案によって一気にやらなければいけない状況に株主との関係も含めて追い込まれていた」と指摘しました。

そのうえで、「今後、コンビニ事業で生き抜くためには、大きな投資が必要になる。投資を十分に行うためにも、主力のコンビニに注力し、次世代のコンビニをどうやって作っていくのか、ビジョンを明確にすることが必要だ」と話していました。

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