松竹は11日、2025年2月期の連結最終損益が5億8000万円の赤字(前期は30億円の黒字)になる見込みだと発表した。従来予想(前期比16%増の35億円の黒字)から一転、赤字になる。赤字は新型コロナウイルス禍で映画や演劇の業界が低迷した22年2月期以来。無料BS放送を手掛ける持ち分法適用会社が振るわず、投資損失を計上する。
業績の下方修正を受け、岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリストは「(動画配信大手)ネットフリックスなど、いつでもどこでも見られる利便性の高い動画配信サイトに視聴者が流れてしまい各社はBS事業に苦戦している印象だ。スポーツ中継以外のコンテンツで誘客することが難しくなっている」と指摘した。
11日の東京株式市場では取引時間中の開示を受け、松竹株の終値は9246円と前日比1069円(10%)安となった。東証プライム上場企業で2番目に大きい下落率だった。
松竹の売上高は前期比1%増の867億円、営業利益は72%減の10億円となる見通しだ。従来予想よりそれぞれ50億円、3億円下方修正した。洋画の配給が業界全体で遅れていることなどが影響し、子会社が運営する映画館で興行収入が想定より振るわない状態が続いている。
同日発表した24年3〜8月期の連結決算は、最終損益が6億8100万円の赤字(前年同期は33億円の黒字)、売上高は前期比8%減の395億円だった。歌舞伎などの演劇事業では来場者数は好調だったものの、猛暑が響いて衣装の貸出事業などが伸び悩み、セグメントの損失が膨らんだ。不動産事業は好調だった。
内藤証券の田部井美彦投資調査部長は「夏以降は商いを伴う形で株価が上昇し投資家の期待が高まっていた中で、最終赤字というインパクトが大きかった」とみた上で、「てこ入れしなければいけないという分野は明らかだ。改善見通しが今後でてくることによって株価は上昇していくのではないか」としている。
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