田園地帯に広がるメガソーラー=福島県南相馬市で2020年1月30日、小川昌宏撮影

 秋の昼間の電力の「タイムセール」が広がっている。太陽光発電が拡大する中、春や秋にはエアコンなどの電力需要が減り、晴れた日に発電を一時的に止める事態が頻発しているためだ。時間帯を指定したポイント還元による割引が九州地方などで進んでおり、この秋は東北地方でも始まった。

 気温が30度を下回り、冷房をつけずに窓を開ける。そんな過ごしやすい秋の日、電力業界では太陽光などの発電事業者に一時的に送電を止めてもらう「出力制御」が起きている。

 電力は需要に合わせて供給量を調整する必要があり、火力発電を止めても電力が余りそうな場合、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの出力制御が発令される。

 再生エネの出力制御は、資源エネルギー庁によると、2023年度には全国で約19億キロワット時に達した。約45万世帯の年間消費電力に相当する再生エネを使い切れずに無駄にしている計算だ。

 こうした再生エネの有効活用が課題となっており、国は余った電力を他地域に送れるよう、将来的に九州や本州などを結ぶ送電網を強化する方針だ。

 電力各社は秋や春の昼間に電力消費を増やそうと、専用のスマホアプリで消費時間のシフトを促す。

 もともとは節約量に応じてポイントを還元する節電システムを応用。電力会社が需要を伸ばしたい時間帯を指定し、普段より増えた電力使用量に応じてポイントを還元する仕組みだ。

 太陽光発電が盛んな地域で導入が進み、九州電力が23年春に本格実施。今年春には中国、北陸電力も実施した。

 東北電力もこの秋、1キロワット時あたり1円相当のポイント還元に踏みきった。

 出力制御が頻発する九電は10月、ポイント還元を1キロワット時あたり10円相当まで拡大。指定時間帯に調理や洗濯をしたり、電気自動車の充電やヒートポンプ式給湯器「エコキュート」の炊き上げ時間をずらしたりする人もいる。

 ただし、家電利用を特定の時間帯に移すには生活リズムを変える必要もあり、利用者の負担もある。

 関西電力がこの秋に始めた家庭向けの利用促進策は、家電を遠隔制御できるスマートリモコン「ネイチャーリモ」を活用。メーカーと共同で実証実験を始め、家電を自動制御して特定の時間に利用を移す効果を試す。【久野洋】

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