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前売券の販売 目標の半分ほど
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認知度は上昇も、関心度は低下傾向
およそ160の国と地域が参加する大阪・関西万博は、大阪 此花区の人工島・夢洲を会場に、来年4月13日から10月13日までの半年間、開催されます。
会場では、開幕に間に合うよう、参加国や企業などがみずから建設する70余りのパビリオンや、世界最大級の木造建築物となる「大屋根リング」の工事がピークを迎えています。
このうち、会場のシンボルとされる「大屋根リング」は、8月に会場を囲むリングがつながり、現在はエレベーターを取り付ける工事や芝生の整備などが進められ、来年2月までには完成する計画だということです。
また、工事の遅れが指摘されてきた海外パビリオンについては、独自に建設する予定の47か国のうち、博覧会協会によりますと、これまでに45か国が着工したということです。
このほか、脱炭素やAI=人工知能、ヘルスケアなどをテーマにした今回の万博には、多くの企業が参画しています。
13の企業やグループがパビリオンを建設しているほか、「未来の社会」をイメージした展示や自動運転によるEV=電気自動車のバス、それに「空飛ぶクルマ」の準備も進められています。
このうち人材サービス大手の「パソナグループ」のパビリオンは、「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマを象徴する展示物として、iPS細胞から作った「ミニ心臓」を展示の中心に据える計画で、先月その試作品を公開しました。
「パナソニックホールディングス」は、会社が培ってきた人の行動や表情を解析する技術を活用し、来場者の行動や表情をもとに「蝶」をモチーフにしたグラフィックを映し出す演出を行うということです。
来年2月ごろのパビリオンの完成を前に、展示内容を報道陣に公開したパナソニックホールディングスの小川理子関西渉外・万博推進担当参与は、「すごく面白い体験ができたと感じてもらって、5年たっても10年たっても思い出してもらえるような、原体験を味わってほしい」と話していました。
万博で国内初めての実現を目指していた「空飛ぶクルマ」は、来場者を乗せる商用運航は見送られ、運航する4つの陣営がすべて、来場者を乗せないデモ飛行を行うことになりました。
プロデューサー 石黒教授「未来つくるきっかけに」
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博では、8人のプロデューサーが「いのち」をテーマに会場の中心部にパビリオンをつくることになっています。
そのうちの1人が、ロボット工学の第一人者として知られる大阪大学の石黒浩教授です。
石黒教授が手がけるパビリオンでは、人間に似たロボット「アンドロイド」などの最先端の技術が、生活空間に溶け込む様子を体験してもらう予定です。
石黒教授は今月取材に応じ「順調に仕上がってきていて、手応えを感じながら準備を進めています。みんなに驚いてもらえるようなパビリオンにできればいいなと思っています」と意気込みを語りました。
そして「これから50年たてば、人間らしいロボットやAIが世の中で使われることは必然で、パビリオンではそういったロボットなどを展示し、リアリティーある未来のシーンを紹介したい」と話していました。
その上で、万博を開催する意義については「未来についてみんなで考えること、そして想像力を豊かにして自分たちで未来をつくるきっかけにすることだと思います。ぜひ来ていただき、未来を一緒に考えてもらいたいです」と話していました。
前売券の販売 目標の半分ほど
一方、万博の前売券の販売状況は低調で、実施主体の博覧会協会によりますと、目標としている1400万枚に対し、今月9日時点の販売実績はおよそ714万枚と、目標の半分程度にとどまっています。
13日からは、来場する日時の予約が始まるほか、繁忙期ではない時期に予約なしで入場できる紙のチケットもコンビニなどで販売されます。
万博を実施する博覧会協会も、PRを強化し、パビリオンの展示内容やイベントの情報も積極的に公開するとしていますが、前売券の販売目標を達成できるかが、大きな課題となっています。
認知度は上昇も、関心度は低下傾向
民間の調査では、大阪・関西万博に対する「認知度」は上昇傾向にあるものの、「関心度」は逆に下がる傾向にあります。
「三菱総合研究所」がことし4月に、全国の3000人を対象に行ったアンケート調査によりますと、2025年に大阪・関西万博が開かれることを「知っている」と答えた人の割合・「認知度」は93.4%で、前回・去年10月の調査から3.8ポイント上昇しました。
地域別にみると、「京阪神圏」「その他西日本」「中京圏」「首都圏」「その他東日本」の地域で90%を上回りました。
一方で、万博に「大いに関心がある」、「まあ関心がある」と答えた人の割合・「関心度」は25.6%で、前回の調査から1.9ポイント低下しました。
「京阪神圏」の関心度は40.5%だった一方で、「首都圏」の関心度は21%にとどまりました。
町工場やベンチャー企業も準備進める
大企業や海外のパビリオンに注目が集まりがちな大阪・関西万博ですが、地元大阪の町工場やベンチャー企業も、国内外から来場した人にアイデアや技術をアピールしようと、準備を進めています。
万博では大阪の町工場やベンチャー企業400社余りが、アイデアや独自の技術などをアピールする計画です。
このうち、履物の製造が盛んな大阪・生野区では、地元の中小メーカーが「未来のファッション」をテーマに、“宙に浮く靴”の展示を目指しています。
開発の中心となっている社員40人余りの靴メーカーでは、試作品のサンダルの底と展示台にそれぞれ磁石を埋め込み、反発する力で宙に浮かせる実験を繰り返していて、これまでに6センチほど浮かせることに成功したということです。
将来的には、磁石の反発を利用し、弾むような歩行感のある靴を開発したいとしています。
「リゲッタ」の高本やすお代表取締役は、「万博には、世界中からものづくりの人たちや子どもたちが来る。未来を感じて、希望があるんだと思ってもらいたい」と話していました。
一方、脱炭素に向けて、藻の一種のミドリムシから油の成分を取りだし、バイオ燃料の開発に取り組む大阪のベンチャー企業は、バイオ燃料を使ったトラックを会場内で走らせる予定です。
このベンチャー企業のミドリムシは、稲を用いた培養液を使う独自の技術で、6日間で90倍に増やすことができ、光合成による培養と比べて、短い期間で大量のミドリムシを培養できるのが特徴だということです。
この技術が実用化できれば、効率的にバイオ燃料を製造できるのではないかとしていて、温室効果ガスの削減に向けた日本のベンチャー企業の取り組みを、国内外にアピールしたいとしています。
RevoEnergyの中谷敏也社長は「循環型の社会を構築するために、大阪にはこういう技術があるということを世界の人に知ってもらいたい」と話していました。
防災面の課題も
関西・大阪万博については、防災面の課題も浮かび上がっています。
万博の会場は、大阪湾に浮かぶ「夢洲」と呼ばれる人工島で、島へのアクセスルートがトンネルと橋の2つに限られています。
実施主体の博覧会協会は
▽トンネルと橋は耐震化工事が行われ、南海トラフ巨大地震による激しい揺れにも耐えられる
▽会場はかさ上げされていて津波による浸水は想定されていない
としています。
ただ、トンネルや橋の安全確認に時間がかかれば、一時的に孤立する可能性があるとして、対策を進めています。
博覧会協会の試算では、会場内で孤立する人は最大15万人にのぼることから、協会は最大3日間、孤立する場合に備えて、大阪府と大阪市とあわせておよそ90万食の備蓄を準備する計画です。
一方、会場内にある「屋内の避難スペース」は今のところおよそ10万人分しかなく、雨風をしのげる避難スペースの確保が課題となっています。
また開催期間中は、猛暑への対応、台風や落雷への備えも欠かせません。
猛暑対策としては
▽パビリオンに事前予約制を導入するなど、屋外での待ち時間の削減を図る
▽無料給水スポットの設置など給水環境の整備
▽熱中症警戒アラートなどの情報提供
など複数の対策を重ねるとしていて、開幕までに準備を進めることにしています。
勢力の強い台風が近づく場合、協会は「事前に閉場を決めることはありえる」としていますが、現時点では、具体的な基準は決まっておらず、今後、検討する方針です。
落雷のリスクが高まった場合には、会場のシンボルとされる「大屋根リング」の上にいる人を避難させる計画ですが、具体的な判断基準や誘導の手順は今後、決める予定です。
博覧会協会は、こうした災害への対応について、先月公表した「防災実施計画」の中で示していますが、年内をめどに、より具体的なマニュアルなどを整備し、会場での訓練なども実施する方針です。
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