広島県尾道市の観光のシンボルの一つ「千光寺山ロープウェイ」の2023年度の年間乗客数が初めて50万人を超え、1957年の開業以来最多となった。新型コロナ禍に見舞われた2020、21年度は大きく落ち込みながら、新展望台オープン(22年3月)や新型コロナ5類移行(23年5月)などを追い風にV字回復。桜が咲いた今月は花見客でにぎわい、24年度も順調な滑り出しとなっている。
尾道本通り商店街近くの山麓(さんろく)駅と千光寺山(144メートル)の山頂駅の間365メートルを結ぶ。車窓から眼下に坂の町と尾道水道、瀬戸内しまなみ海道の起点の新尾道大橋を望み、山上からは瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島から四国の山々まで遠望する「3分間の空中散歩」として親しまれている。
1957年3月に市営で運行が始まり、実質初年度の57年度は43万351人が乗車した。75~84年度は20万人に届かなかったが、それ以降は20万人以上を維持する。
現在の車両は2011年に導入された3代目。窓が広く景色を眺めやすいデザインが好評で11年度は36万人が乗車した。日本遺産「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」に認定された15年は40万人を超え、17年度に48万8953人を記録した。
20、21年度はコロナ禍で20万人台に半減。22年4月に運賃を片道320円から500円に値上げしたが、22年春オープンした二つの新たな展望台「PEAK(ピーク)」「MiTeMi(みてみ)」のインパクトは大きく、22年度は48万人台に回復。23年度は過去最多の50万3216人となった。
開業以来の総乗車数は1817万3402人、年平均26万7256人。市観光課は「展望台リニューアルで千光寺山の魅力を増すことができた。円安も追い風になり外国人観光客増につながっている」と分析する。
山上の千光寺は平安初期の開基と伝わる古刹(こさつ)で、多くの文人墨客が風景をめでた。千光寺公園には市立美術館や文学のこみちがあり、サクラやツツジ、フジなど花の名所でもある。
サクラが満開だった今月7日は5474人が乗車し、昨年4月2日の5149人を上回る好調。12日は満開を過ぎたものの、多くの観光客が名残の花を楽しんでいた。
初めて乗車したという尾道大4年の河合亮太さん(22)。「コロナ禍が過ぎたらサクラを見に行きたいね、と友人と話していた。就職活動の合間の息抜きになりました」と車窓から景色を眺めた。
趣味の写真撮影に夫婦で来た広島市の男性(64)は展望台でシャッターを切り「町並みと千光寺山からの絶景を満喫できた」、東京から友人と訪れた会社員、三沢陽奈さん(23)は「海と山の両方の景色が最高」と笑顔を見せた。
11年から運行業務を受託し、14年以降は指定管理者として運営にあたっているおのみちバスは「イベントなどで混雑する時は臨時便を出すなどきめ細かく対応する。さらに多くの人に利用してほしい」としている。【関東晋慈】
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