スマートフォン(イメージ)=ゲッティ

 空き時間を使って単発・短時間で働く「スポットワーク」の給与は、現金か電子マネーで受け取りたい。調査会社MMD研究所の調査結果によると、スポットワーク経験者の8割がどちらかの方法を望んでいた。しかし、給与を電子マネーで受け取る「デジタル給与」は今年始まったばかりとあって、企業側には慎重意見が多いようだ。

 MMD研究所によると、スポットワークの経験者500人に、仕事探しサービスを選ぶ際に重視することを複数回答で尋ねたところ、「勤務時間の柔軟性」が38・8%で最も多く、「求人の多さ」(36・2%)、「即日払いがある」(34・6%)――が続いた。

 仕事探しサービスに追加してほしい機能(複数回答)も尋ねると、銀行口座の登録をせずに給与を受け取れる機能が人気を集めた。具体的な受け取り方法としては、電子マネーなどの「決済サービス」が40・4%、「手渡し」は40・2%とほぼ同数。スマートフォン上で管理が完結したり、銀行口座から現金を引き出したりする手間を省けることが好まれているようだ。

 給与を電子マネーで受け取る「デジタル給与」は、8月にスマホ決済アプリ大手のPayPay(ペイペイ)が初の事業者として厚生労働省から指定を受けた。現在は同社を含むソフトバンクグループ社員のみが対象だが、年内には一般企業にも提供を開始する予定だ。

 デジタル給与は、銀行口座への振込手数料の節約などで企業にとっては経費削減につながりそうだが、現時点で大半の企業は導入に消極的だ。

 帝国データバンクが10月に実施した調査では、回答した1479社中、導入に前向きな企業はわずか3・9%だった。88・8%が「導入予定はない」と回答し、セキュリティー対策や事務負担増加の懸念を理由に挙げた。

 PayPayの担当者は「デジタル給与導入には労使協定の締結などが必要で業務負担が重くなる。しかし、振込手数料がハードルとなって、これまで難しかった給与の即時払いや週払いなどに柔軟に対応しやすくなる」として、従業員満足度の向上や人材流出の防止など間接的な利点も訴えていくという。【藤渕志保】

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