通販大手のニッセン(京都市)が開発した“推し活ジャケット”が、ネット交流サービス(SNS)などで注目を浴びている。多くのグッズを持ち運べるようポケットを八つ備えたのが特徴だが、仕事服のポケット不足に悩む女性たちにも支持を広げているようだ。
このジャケット(税込み1万6500円)はニッセンが10月4日に発売した。手がけたのは入社2年目の女性社員。「アイドルやキャラクターなどの『推し』と常に一緒にいたいという願いをかなえたい」との思いで開発したという。
推しの缶バッジを入れるポケット▽アクリルスタンドを傷つけずに持ち運べるメッシュ素材のポケット▽キーホルダーなどを下げられる金具付きのポケット――など多機能なポケットを備え、収納力も持たせた。色合いは上品なネービーを採用し、休日だけでなく「仕事帰りのイベント参戦」もできるようデザインされている。
すると、X(ツイッター)などでは「仕事のときにすごく助かる」「女性もののジャケットって名刺入れもメモ帳もペンも入らない。こういうの欲しい」「女性に優しい精神がありがたい」などと、女性とみられるユーザーから多くの賛辞が寄せられた。当初の販売予定分は初日に完売。11日に数を増やして予約を再開したが、23日時点で在庫切れとなっている。
一般的に女性服は男性服よりも、ポケットが少なくサイズも小さいとされる。ニッセンが9月に自社サイトで実施した調査(有効回答数3611人)によると、近所への気軽な外出にカバンを持ち歩く人は男性の64・1%に対し、女性は91・4%。2024年1月に東京・羽田空港で航空機の衝突事故が起きた際には「緊急時に手ぶらで避難するとき、女性はポケットがなく何も持ち運べない」とSNSで議論になった。
ニッセンはこれまでもポケットが多い「多ポケット」の服を開発してきた。男性向けは8年以上前から、女性向けも電子決済の普及でカバンを持たない人が増えたことを受けて昨秋から、コートやパンツなどを販売している。
ただ、いずれもカジュアルな服。オフィスでも着やすい女性の多ポケット服は、実は今回のジャケットが初めてだ。ゆったりした作りにすることで、ポケットが多くてもシルエットが崩れないよう工夫したという。
ニッセンは今回の反響も踏まえ、今後も女性のビジネス向けの多ポケット服を検討するという。広報担当者は「お客様の『あったらいいな』という声とシルエットのきれいさなどのデザインを両立できるよう、研究しながら商品を企画したい」と話した。【井口彩】
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