踏んでもスニーカーのかかとが跳ね上がり、すぐに元の形に戻る

丸紅コンシューマーブランズ(東京・台東)は2025年春をめどに、手を使わず履ける靴専門の米ブランド「Kizik(キジック)」のスニーカーを日本向けに発売する。まずはオンラインストアを中心に販売。足元では米スケッチャーズが展開する「ハンズフリー・スリップインズ」なども人気を集めるが、米国発の専門ブランドの上陸で市場はますます活性化しそうだ。

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キジックは米スタートアップ、HandsFree Labs(ハンズフリーラボ、米ユタ州)が17年に立ち上げたブランド。靴ひもを結んだり靴べらを使ったりすることなく履ける「ハンズフリーシューズ」を専門とする。丸紅コンシューマーブランズがこのほど日本国内の販売代理店契約を締結した。

ナイキやクロックス、スケッチャーズを経て1月に丸紅コンシューマーブランズに加わった髙原秀人社長はキジックについて「革新的で革命的な靴の作り」と語る。「日本の消費者にはまだあまり知られていないがナイキのフライイーズシリーズにも技術提供しており、業界では知られた存在。このブランドが扱いたくて丸紅コンシューマーブランズに入ったようなもの」(髙原社長)とまで言い切る。

ハンズフリーラボはデザイン工学専攻者や数学者を採用し、手を使わずに履ける靴の技術を追求してきた。19年には米ナイキから出資を受け、技術提供。現在は200を超える関連の特許技術を保有、または申請中だ。

米国のKizikの店舗では靴を試し履きした人の購買率が75%に達するという

手をつかわずに簡単に履ける理由の1つはスニーカーのかかと部分だ。足元では米スケッチャーズが展開する「ハンズフリー・スリップインズ」も人気を集めるが、髙原社長は「構造がまったく違う」と説明する。スケッチャーズがかかとを固くすることで履きやすくしているのに対し、キジックはバネのように弾力のある独自の素材を仕込み、踏んだかかとが跳ね上がってすぐに元の形に戻るようにしている。

ブランドが展開するすべての靴がハンズフリーなのも特徴だ。丸紅コンシューマーブランズ経営企画室の木下陽平副室長は「ブーツやアウトドアシューズなど、どんな靴もハンズフリーにできるのがキジックの強み」と語る。24年1月に米ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES」ではキジックのスノーブーツがイノベーションアワードを受賞した。すねまでカバーし、ひもを結ぶのに数分要するようなブーツを手を使わず履いたときは「噓だろ?という感覚だった」と木下氏は笑う。

Kizikのハンズフリーシューズ

25年3月にもオンラインストアを開設する計画だ。まずはスニーカーから取り扱いを始める予定で、価格は1足2万円前後となる見通し。「実際に足を入れて体験してもらうのが大事」(髙原社長)として、期間限定店舗などで消費者が実物に触れられる機会も用意していく予定だ。

かがまずに履けるハンズフリーシューズは子供や高齢者でも人の手を借りずに自力で履きやすく、育児や介護にあたる人の負担も減らせる。キジックは日本ではスケッチャーズの「ハンズフリー・スリップインズ」やチヨダの「スパットシューズ」などに次ぐ後発となるが、髙原社長は「日本ほど靴の脱ぎ履きが多い国はない」と市場の潜在力に期待する。各社がしのぎを削る中、デザインや機能性の選択肢は今後ますます広がりそうだ。

(岸本まりみ)

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