ものづくり企業が地域と連携して一般市民の工場見学に取り組む「地域一帯型オープンファクトリー」。その面白さに気付き、加工体験プログラムに工夫を凝らす企業が大阪府河内長野市にある。精密板金加工会社の瑞穂工作所。最初は鉄製の板を機械で曲げてもらう程度だったが、参加者の歓声や笑顔に触れるうちに「もっと楽しませたい」と、ショベルカーのおもちゃや精巧なパズルなどを登場させている。【新宮達】
7月下旬のイベントで披露したのは、ステンレス製の板を2枚重ねた日本地図パズル(縦65センチ、横60センチ、重さ6キロ)。地図データは知り合いに提供してもらい、レーザー加工で上側の板をくりぬいた。はめた後の取り出しには磁石を使う。
地図オタクという荒木伸規社長(54)の発案。レーザー加工で焦げて茶色になる都道府県の表面を洗浄剤を使ってきれいにし、裏面の出っ張りはたわしでこすって滑らかにするなど、見た目や手触りで表面と裏面とが簡単に判別できないようにした。来場した女子高校生グループとどちらが早く完成させられるかを競争するなどして盛り上がったという。
これまで工場見学は受け入れていなかったが、河内長野市が主導して2022年11月にオープンファクトリー「ワークワクワク河内長野」が始まった際に参加。最初は「ノウハウもなく、本業の邪魔にもなるのでは」と消極的だった。しかし、鉄製の板を機械で「コの字」に曲げる簡単な加工体験に参加者の歓声や笑顔があり、持ち帰りの要望に驚いたとする。
23年夏の2回目以降は、持ち帰ってもさびにくいステンレス製の板に変更。社員も提案するようになり、人が支える形にしたブックエンド、貯金箱の加工体験を登場させた。今夏はフォークリフトやショベルカーなどのおもちゃを制作し、解体してドライバーで組み立てるプログラムを入れた。
近畿経済産業局によると、近畿2府4県と福井県を合わせた7府県では15年度に2地域だったオープンファクトリーは、今年3月末には17地域に広がっている。担当者は「同じ地域でも異業種が連携することで違った視点での新商品の開発や注目を集めることによって採用につながるなど、企業にプラスは多い」と指摘する。
「ワークワクワク河内長野」の参加企業はスタート時の18から倍増した。実行委員会の会長を務める荒木さんは、周辺地域のものづくりイベントにゲストで呼ばれるケースが増えた。今年8月に枚方市内でブースを設けたところ、中学生の男子生徒が「社長のところで働くには工業高校を出ておいた方がよいの?」と尋ねてきたという。
11月下旬の次回開催に向けて、荒木さんは「参加した子どもや親の喜ぶ姿がモチベーションになっている。見せる側も楽しみながら、河内長野の良さを発信して活性化につなげたい」と意気込んでいる。
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