損保大手4社が企業向け共同保険の保険料を不当に引き上げるカルテルを結んだなどとして、公正取引委員会は31日、計9件の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、計約20億7千万円の課徴金納付命令と排除措置命令を出して発表した。

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 共同保険は、1企業が備える災害などの大規模リスクを複数の損保が共同で引き受け、各損保が引き受け割合に応じて保険料を支払う仕組み。公取委は、各社が同じ条件で保険を引き受ける共同保険は事前の情報交換が前提で、保険料率や引き受け割合などを決める際にカルテルや談合につながりやすいと指摘。損保や発注企業が十分に留意すべきだと訴えた。

 命令を受けた4社は三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。

 公取委によると、4社は2019年12月以降、電力会社JERA、コスモ石油、京成電鉄、東急が発注した災害用などの共同保険で、各社が見積もり合わせで個別に提案すべき保険料で事前調整したとされる。あいおいを除く3社では20年8月以降、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、シャープ、仙台空港が発注した共同保険でも同様の事前調整があったとした。

 この3社は19年3月以降、警視庁のパトカーなどの保険や、都立病院が損害賠償請求に備える保険の入札で談合し、落札額を事前調整していたとされる。

 独禁法違反9件の受注総額は約540億円。各社の営業担当者は、カルテルや談合によって保険料の低下を避けようとし、オンライン会議、電話、メッセージアプリのほか、カラオケ店内での面談によって事前調整をしていた。複数社の担当者は調整結果を営業担当の部長らに報告するなどしていたが、カルテルを辞めるよう求める指示はなく、むしろ評価する反応もあったという。(高島曜介)

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