Q.今回の延長は東証にとってどのような意義がありますか。

A.要因となったのは2020年に起きた大規模なシステム障害だが、今後システム障害が起こったとしても、取引時間を延長したことによってリカバリーできる可能性が増えるということはメリットだと思う。

また、投資家にとってはそれだけ投資機会が増えるということになり、そのことは東証にとってもメリットになる。

個人投資家の場合、専業の人がいる一方、会社の従業員として働きながら「兼業」で株式の取り引きをしている人もいると思う。休憩時間など空いた時間で取り引きができるのであれば、取引終了時間が延長した分だけ取引機会が増えることになるだろう。

Q.世界の取引所と比べて取引時間は長い方ですか。

A.30分延長しても、アメリカなど海外の主要な取引所に追いつけるわけではない。ただ、東証として30分延長したというのは、世界に肩を並べるための一歩として捉えているだろう。

Q.今回の延長で株式の取り引きは活性化するでしょうか。

A.延長しただけで東証が思うような売買高、あるいは売買代金が増えることは少し考えづらい。時間の延長だけではなく、東証に上場する企業の魅力を高めていくことが重要だと思う。

例えば小売店は営業時間を単に延ばしたからといって、売上高が爆発的に伸びるかというと必ずしもそうではない。魅力のある商品があるからこそ売れる。

株式を売買する「場」を提供している東証も同じで、取り引きされる銘柄の魅力をどんどん高めていくことが、売買高や売買代金の増加につながっていくと思っている。

Q.上場企業は取り引きが終了したあとに決算を発表するところが多いと思いますが、企業の対応は変化するでしょうか。

A.現状は取引終了後に決算情報を開示する企業が多いが、30分延長されるのを機に取引時間中に開示するところも一定数、出てくるのではないか。上場企業が情報開示のタイミングをどのように判断するかは、今後の注目点になると思う。

取引終了後に決算を開示する企業が多いのは、投資家の期待に対応している面もあるのではないか。取引時間中に決算が発表されると、例えば多くの銘柄を保有している投資家にとっては瞬時に複数の内容をチェックして判断しなければならず対応が難しくなる。取引終了後であればじっくり決算の中身を精査することができる。

ただ、原則として取締役会などで決まったことは遅滞なく開示していくということが求められている。どういうタイミングで、どういった情報を出すのかを経営者は考えていかなければならない。

例えば取引時間中に決算を発表するのであれば、決算の数字と一緒にその背景や業績が変動した要因、そして業績に対する会社の考え方を(決算発表に)近い時間帯で出すなど、情報開示のタイミングと内容をしっかりマネジメントしていくことが求められるだろう。

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