中国政府は、実質的には地方政府の債務だが公式統計には表れない「隠れ債務」の解消に向け、今後5年間で10兆元(約210兆円)の地方債を追加発行する。地方財政が逼迫(ひっぱく)するなか、隠れ債務の膨張が金融システムへ飛び火する可能性もあり問題になっていた。

 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に当たる)常務委員会は8日、3年間で6兆元の地方債を追加発行することを承認し、既に決定していた4兆元と合わせて追加発行額を計10兆元とした。

 隠れ債務とは、インフラ投資のために、地方政府が傘下の投資会社「融資平台」を通じて発行した債券などを指す。中国では地方政府の債券発行枠は中央によって決められる。融資平台はその枠を超えて資金調達をするために使われ、この隠れ債務の解消が急務になっていた。

 今回の決定により、今後5年間で計10兆元の地方債を追加発行することで、融資平台の債務を地方債に置き換える。融資平台の信用不安から支払わなければいけない金利が上昇しており、地方債に置き換えることで利払い額を抑える。同時に地方政府の債務の全容を「見える化」する。

 中国政府はこれにより、全国の隠れ債務を現在の14.3兆元から2028年までに2.3兆元まで圧縮できるとする。一方で、実際の隠れ債務額は更に膨らんでいるとの指摘もある。(北京=鈴木友里子)

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