大林組は11日、都心部でのデータセンター開発事業に参入すると発表した。今後10年で1000億円を投じ、複数の小規模施設を連携させてデータ通信の速度と量を拡大する。自動運転や遠隔医療などの普及に伴って高速演算の需要はより高まるとみて、新築するほか、空室が目立つ「築古」「駅遠」のオフィスを稼働資産に転換する。
100%子会社のMiTASUN(ミタサン、東京・港)を11月下旬に設立する。主に東京・大手町から半径8キロメートルの地域にあるビルをデータセンターに改修してサーバーを保有する事業者に提供。使用電力に応じた料金を受け取る。利用者とデータ拠点の距離を縮め、通信遅延が小さくなる利点を打ち出す。
まず2028年度までに東京・三田でビル1棟を新築する。複数の中古オフィスビルの改修も予定しており、他社にも工事を発注する。31年度までに都心データセンターの連携規模を郊外の複数棟からなる大型データセンター並みに広げる。
都心は土地代が高くて広大な敷地を確保しづらい。データセンターは防災性能の要求水準が高いこともあり立地が限られていた。大林組は複数の施設を連携させて処理能力を確保する。防災性能の異なる複数の施設を連携させて安全性を担保する仕組みも提案する。
データセンターの利用者が運営する事業にもよるが、コンマ数ミリ(ミリは1000分の1)〜数ミリ秒単位と極めて遅延の小さい通信サービスが提供できるようになる。例えば、リアルタイムの事故防止が求められる自動運転や遠隔医療、eスポーツの競技会などでの利用を想定する。
データセンター建設には立地条件や需要動向の見極めが重要だ。施設には重量物であるサーバーの設置に耐える床の強度や、廃熱や配線のための十分な天井高も必要になる。大林組は受注した工事を通じて蓄えた知見を生かし、既存ビルの改修によって収益が見込めるかを判断する。
大林組が11日発表した24年4〜9月期の連結決算は、純利益が前年同期比85%増の551億円だった。国内で大型工事が順調に完成したほか、前期に米水道プラント工事会社を買収したことで増収・増益となった。25年3月期通期の業績見通しは据え置いた。売上高は前期比8%増の2兆5100億円、純利益は16%増の870億円を見込む。
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