石油化学事業は先行き不透明感が強い

化学大手7社の2024年4〜9月期決算が12日、出そろった。旭化成やレゾナック・ホールディングスなど4社で最終損益が改善した。人工知能(AI)の急速な普及を背景に最先端半導体や電子機器向けの素材販売が伸びた。石油化学市況の底入れも利益を押し上げた。もっとも本格回復には遠く、下期の事業環境は不透明感が強い。

レゾナックが12日発表した24年1〜9月期の連結決算は、最終損益が507億円の黒字(前年同期は63億円の赤字)だった。4〜9月期の純利益も前年同期の4倍の237億円と大きく増えた。AI向け半導体の基幹部品である先端メモリー「HBM(広帯域メモリー)」向けの絶縁材料や、データセンター向けのハードディスクメディアが好調だった。

あわせて24年12月期の連結最終損益が320億円の黒字(前期は189億円の赤字)になる見通しだと発表し、従来予想から25億円下方修正した。半導体材料は好調で営業利益は上方修正したが、石化事業の構造改革費用の計上が重荷となる。

他の化学大手の4〜9月期決算では旭化成の純利益が602億円と前年同期から95%増えた。高機能スマートフォンやサーバーなど先端半導体向けの電子材料の収益が拡大した。25年3月期の業績見通しも上方修正した。

化学各社は石化事業の損益は持ち直しているが需要は力強さに欠け、市況の回復にも息切れ感が漂う。化学製品の基礎原料であるエチレンの生産設備の国内稼働率は好不況の目安になる90%を下回り続けている。上期はナフサなどの原材料高が在庫評価益を押し上げたが、足元でナフサ価格は崩れ始めており在庫評価益は剝落しそうだ。

各社は石化事業を中心に下期の事業環境を慎重にみている。会社の通期最終損益予想は全社が市場予想(QUICKコンセンサス)を下回る。

半導体材料はAI向けは好調な半面、それ以外の民生や産業、車載向けの回復が遅れている。信越化学工業の轟正彦取締役は決算説明会で「10〜12月期以降、顧客から半導体ウエハー在庫の調整を強めたいという声が聞かれ始めた」と話した。

東ソーは25年3月期純利益予想を下方修正し、前期比8%減530億円と一転減益を見込む。半導体関連はロジック向けなどで戻りが鈍く、半導体製造装置の部材に使う石英ガラスが低調だ。石化関連でもウレタン原料や塩化ビニール樹脂の市況が好転せず採算が悪化する。

化学大手は事業の見直しを急いでいる。石化事業は市況との連動性が高く、中国による過剰生産の影響を受けやすい。旭化成の堀江俊保代表取締役は「石化事業に依存せず収益を上げる構造が見えてきた」と話す。

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