SHIBUYA109を運営するSHIBUYA109エンタテイメント(東京・渋谷)は、15歳〜24歳の男女を対象とした2024年のトレンド調査の結果を発表した。女性が選ぶ「カフェ・グルメ部門」の首位は「アサイーボウル」となった。新型コロナウイルス禍が収束し若者たちが仕事や日常生活で忙しくなった反動で、脱デジタルや自然、健康志向を取り入れた消費トレンドを反映した。SNS発で流行が広がるのも特徴だ。
カフェ・グルメ部門では、ブラジル原産で健康や美容によいとされる果物、アサイーとバナナといったフルーツなどを合わせた「アサイーボウル」が女性の1位となった。健康志向に加え、写真映えもすることから人気が高まった。2位はミスタードーナツのドーナツ「ポン・デ・リング」を焼いてアレンジした「焼きポン・デ・リング」が入った。
男性人気は「みそきん」
カフェ・グルメの男性への調査ではYoutuber(ユーチューバー)の「HIKAKIN(ヒカキン)」が監修し、セブンイレブンで販売するカップ麺「みそきん」が1位だった。全般的に自宅で楽しめる商品が目立つ。
109のマーケティング研究機関で所長を務める長田麻衣氏は「23年のコロナ5類移行で、外出やコミュニケーションが急に増え、『疲れた』と感じる若者が増えた。『家でゆっくり、無理しない』というのが消費トレンドとなっている」と話した。
SNSで流行している言葉や動画についてたずねた「SNSミーム部門(女性)」で2位に入った「風呂キャンセル界隈」は、長田氏によると「『お風呂も無理せず入らなくていい』というがんばりすぎない若者の気持ちを反映している」という。
たまごっち、リバイバル
キャラクターへの注目度も高い。「コンテンツ部門」の1位は電子ペット育成ゲーム「たまごっち」だった。生誕20周年を記念した復活商品が話題を呼び、たまごっちをバッグにつけるなどファッションとしても親しまれる。男性では米動画配信サイト、ネットフリックスのドラマ「地面師たち」が首位。劇中のセリフや解説動画が話題となった。
「アーティスト部門」は23年と同様にTikTok(ティックトック)を中心に短い動画が流行の発信源となった。女性の1位は韓国の女性5人組アイドルグループ「ILLIT(アイリット)」だった。24年3月発売の楽曲「Magnetic(マグネティック)」のダンスが人気を集めたほか、メンバーが着るバレリーナを意識したファッション「バレエコア」の衣装をまねたスタイルが流行した。
男性では1位に歌手の「こっちのけんと」が選ばれた。芸能人などと踊る「ギリギリダンス」が人気だ。
多くの流行を発信するSNSで活躍している人自体への注目度も高い。
「ヒト部門」で女性1位になったのは「美しすぎる上智大生」として話題になったインフルエンサーの「かとゆり」さんだ。男性では、自己啓発系インフルエンサーの「ジョージ-メンズコーチ-」が2位にランクインした。前向きで明るく悩みを笑い飛ばす動画が人気だ。
デジカメ、小さい旧型機に注目
「体験部門」の女子1位は「デジタルカメラ」だった。画素数が低く小さめの旧型機が人気だ。実家に眠っていたものを使ったり、フリーマーケットなどで出品されているものを買ったりするという。レトロな質感や機械自体がファッションの一部となっている。
3位には高原などの自然を好む「自然界隈」がランクインした。スマートフォンをはじめ、デジタル機器から離れる「デジタルデトックス」を求める若者が増えており、自然を楽しむ体験が好まれるという。長野県の上高地などが人気の場所という。
体験部門の男性首位は電動キックボードの「LUUP(ループ)」。交通手段としての利便性の高さが背景にある。
長田氏は「(デジタル機器やサービスを適正に使う)『デジタルウェルビーング』に注目が集まっている。若者は『深く狭いコミュニティ(界隈、かいわい)』を重視する傾向にある。今後は界隈ごとに消費やトレンドを楽しむ『界隈消費』が加速する」と予想する。
調査は109の研究機関「SHIBUYA109lab.(シブヤイチマルキュウラボ)」が毎年実施している。調査対象は15〜24歳の男女それぞれ約520人で、ファッションやアーティストなどにまつわる全7〜9部門の大賞を決めてランキング化した。選定候補は現役の高校生や大学生と一緒に選んだ。
109(マルキュー)、エンタメで若者に訴求
109は1979年に開業した。2000年代にはギャルファッションの聖地として知名度を上げたがギャル人気は鳴りを潜め、アイドルなどのエンターテインメント路線を主軸に切り替え19年に創業40周年を迎えた。
電子商取引(EC)などの台頭で競争環境は厳しい。石川あゆみ社長は「ポケモンなどのキャラクターと連携したり、イベントを増やしたりしている。ブランドの期間限定店などで流行に合わせた店づくりを意識しており、若者に館全体を楽しんでもらう」と話した。
店頭で体験価値を向上させる取り組みを進めており、イチマルキュウラボ開設や今回のような調査も若者を再び深掘りする戦略の一環だ。
(稲福祈子)
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