政府が国策半導体ベンチャー「ラピダス」の支援を強化する。ラピダスが目指す先端半導体の量産化の実現に向けた課題は何か。有識者に聞いた。
民間が投融資できる事業戦略示せ
■長内厚・早稲田大学大学院経営管理研究科教授
「産業のコメ」と呼ばれ幅広い分野で必要とされる半導体は、経済波及効果が大きい。ラピダスが量産を目指す先端半導体も産業競争力の維持・向上のために必要だ。また、半導体の素材や製造装置で世界的に強い日本企業は多く、顧客となるラピダスなどの半導体メーカーが国内にあることは重要だ。国が長期的な戦略の下で資金を出すことには意義がある。
ただ、ラピダスは事業戦略を示せておらず、2027年の量産開始という計画が崩れた場合のアイデアもない。民間企業が安心して投融資できる材料を欠く状態だ。ラピダスを含め日本企業の多くは「技術さえ良ければなんとかなる」という思いが強いが、重要なのはビジネスの考え方だ。
日本は過去に半導体や液晶パネルなどの事業で、技術一点突破で臨んで失敗する経験を繰り返している。その反省から学ぶ謙虚な姿勢も必要だ。【聞き手・福富智】
開発は助金頼み「政府のみ失敗リスク」疑問
■佐藤主光・一橋大教授
民間企業が出資や融資をしやすい枠組みを作ることは、政府の補助金頼みだった半導体支援の出口を示していると言え、一定の評価はできる。
しかし、開発段階は国民の税金が源泉である補助金に頼り続けるままだ。失敗のリスクを政府だけが負う構造は疑問が残る。国が資金を出しすぎると、採算性が甘くなり、赤字体質から抜け出しにくくなったり、民間の創意工夫の余地を狭めたりする恐れがある。
一方、民間主導なら効果的で迅速な開発につながるだろう。半導体の量産に成功した際の最終的な利益を得るのは民間だ。企業は付き合い程度ではなく、早い時期からリスクを取って出資を増やす判断をしてもいいだろう。
政府には開発や生産の進捗(しんちょく)管理が求められる。改善が必要な場合は、思い切って開発手法や経営を大きく見直すべきだ。【聞き手・加藤美穂子】
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