日本製鉄は18日(日本時間19日)、米鉄鋼大手USスチールの買収計画に関連し、同社の製鉄所で働く労働組合員向けの声明を出した。買収に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)執行部が14日に発信した声明に誤りがあるとして、改めて立場を明確化した。組合員の雇用に関わる主要設備の「高炉の操業を維持する」と強調した。
声明は買収交渉を担当する森高弘副会長兼副社長の名前で出した。米大統領選が終了したことを受け、森氏はロビイングのために今週、USスチールが本社を置くペンシルベニア州ピッツバーグ市などを訪問している。USWの地域組合や地域のビジネスリーダーなどと面会する予定だ。
USWのデービッド・マッコール会長ら執行部は14日、声明を発表し「彼(森氏)の唯一の目的は取引を成立させることで、業界や雇用を守ることではない」と強調した。森氏の訪米意図について「(USWの執行部と組合員の)お互いを敵対させることだ」として「日鉄側はUSW執行部が面会を断っているという噓を流している」とも主張した。
これに対して森氏は「日本製鉄は高炉の操業を維持することを約束する」「約束は法的拘束力がある」などと従来通りの反論を改めて表明した。USW執行部との面会については「直近では11月11日に申し入れており、返答をお待ちしている」と明らかにした。
これまでも日鉄はUSW執行部の声明に虚偽が含まれるとして反論声明を繰り返してきた。9月には森氏とマッコール会長がやりとりしてきたメールを開示し、USW執行部側が面会を断ってきた経緯などを明らかにした。
日鉄の買収計画は米大統領選で組合員85万人を抱えるUSWの組織票の獲得を目指す共和党、民主党の両陣営の間で政治問題化してきた。現在は米当局の安全保障上の審査が続くが、大統領選が終了し審査への政治影響が低減したとして日鉄は12月末までの買収完了を目指している。
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