首相官邸=竹内幹撮影

 政府は月内に打ち出す経済対策で柱となる半導体や人工知能(AI)産業への支援策をまとめた。政府保有株の配当を活用する新たな国債発行に加え、商工組合中央金庫(商工中金)株式売却益などを通じ、10兆円以上の支援にかかる財源を捻出する。

 先端半導体の量産を目指すラピダスなどへの支援を念頭に、政府は2030年度までに10兆円以上の公的支援をする方針だ。まず、研究開発段階では補助金など6兆円程度で支え、量産化以降は政府金融機関からの出資、民間企業の融資に対する債務保証などの形で4兆円以上の金融支援を行う。

 補助金など6兆円の財源は、政府系金融機関を通じた投資運用を管理する「財政投融資特別会計」の資金から、NTT株やJT株の配当金収入など2・2兆円程度を確保し、これを返済資金とした「つなぎ国債」を発行して充てる。さらに、既存の基金からの国庫返納金や国が出資する商工中金が民営化のため売却する株式の収入1・6兆円程度を確保する。

 このほか、基金の見直しを進めて、使われず国庫に返納された資金の活用を図るほか、脱炭素社会の実現に向け発行するグリーントランスフォーメーション(GX)経済移行債を活用して2・2兆円程度を充てるとしている。

 金融支援の4兆円にも、財政投融資特別会計の資金やGX経済移行債を活用する。

 石破茂首相は11日の記者会見で、半導体支援をめぐり「赤字国債は発行しない」と述べていた。ただ、基金見直しで捻出される国庫返納金の額、GX移行債からの活用額は年によって変動するため、安定的な資金確保には課題が残りそうだ。【加藤美穂子】

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