JR九州が、社員に朝食を提供する試みを始めた。早い時間の始業で仕事の効率を高めるとともに、帰宅時間を早めて余暇に充ててもらうことを目指す。
5日午前7時過ぎ、福岡市博多区のJR九州本社7階の一室で、メロンパンやペットボトル飲料がテーブルに並べられていた。同社が10月から提供を始めた朝食だ。
提供は午前7時10~50分。この日は、社員55人が部屋を訪れパン1個、ペットボトル1本を受け取った。予算は1人約300円。所得の現物支給として課税対象になるが、社員の負担は60円程度という。利用した20代の男性は「早く退社し、ゴルフの練習に充てたい」と話した。
同社では2020年10月から、社員が働く時間を決められるフレックスタイム制(コアタイム=午前11時~午後3時)を採用。11月から更に自由度を上げるためコアタイムを無くした。ただ部署によっては残業時間が多いところもあり、始業の前倒しで帰宅時間を早め、午後に自由な時間を増やしワークライフバランスの充実を図ることにした。
利用者からは、「朝は電話がかかってきたり、他の人から指示されたりすることもないので仕事に集中できる」などの意見も出ているという。本社に勤務する約1000人のうち、1日当たりの利用者は40人前後で、11月1日までに延べ約1100人が利用した。
JR九州が参考にしたのが、大手商社の伊藤忠商事が13年度から取り組む「朝型勤務」だ。同社では午後8時以降の勤務を原則禁止とし、午前5時から午前8時の早朝勤務を推奨し、賃金を上乗せする。午前8時以前に出社した社員には朝食を無償提供する。
伊藤忠商事によると23年度は本社員約4000人の半数程度が朝型勤務をしている。広報担当者は「朝型勤務をすることで時間に対する社員の意識が変わった。効率性を重視し、仕事のスピードアップにつながった」と話した。
JR九州の朝食提供は25年3月末までの予定で、同社の担当者は「効果が出て残業が減り、生産性が上がるのであれば支社にも広げたい」と語った。【下原知広】
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