米司法省が米グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴えた裁判で、一部事業の分割を含む是正案を裁判所に提出した。すでに人々の生活の一部となったインターネット分野での技術革新の活発化を念頭に、競争環境を整備する必要がある。
司法省はグーグルがネット検索サービスで独占状態であるとして2020年に提訴し、今年8月に米連邦地裁が原告側の訴えを認める判決を出していた。
同省は米国時間20日に提出した是正案でネット閲覧ソフト(ブラウザー)「クローム」に関連する事業の分割と売却を求めた。米アップルなどと交わしてきた「自社の検索サービスを標準搭載してもらう代わりに多額の手数料を支払う」との契約禁止も盛り込んだ。
グーグルは売上高の過半を検索結果に関連がある広告を表示する事業が占め、クロームは自社サービスの利用を促す有力な手立てとなってきた。事業分割が収益への逆風となるとの見方が多く、米株式市場では同21日、持ち株会社の米アルファベットの株価が一時、前日比7%下落した。
グーグルは世界の検索サービス市場で約9割のシェアを握り、競争が乏しくサービスを改善する力が働きにくいとの指摘が出ていた。アップルなどとの契約がなくなれば消費者が自らサービスを選択する傾向が強まり、サービスの質をめぐる競争が活発になる可能性がある。
一方、グーグルが08年に提供を始め、世界シェアの7割を握るクロームの分割には課題がある。現在、クロームはグーグルのほかのサービスと一体で運用されており、切り離されることで利便性が下がりかねない。
同社はクロームの要素技術を米マイクロソフトなどに供与しており、分割により投資が滞れば他社のサービスに影響が及ぶ。司法省が示唆する基本ソフト(OS)「アンドロイド」の分割が実現すると、スマートフォンの価格が上昇する可能性がある。こうした悪影響を避けなくてはならない。
グーグルは12月中旬までに競争回復に向けた対案を提出し、連邦地裁が25年8月までに結論を出す。ただ、同社は一審判決を不服として控訴する意向を示しており、決着は数年後になる見通しだ。変化の速度が増すIT分野で競争政策をどう有効に機能させるかも引き続き課題となる。
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