大阪大学の高島義徳教授らの研究チームは、従来の8倍の強度と20倍の分解速度を両立した生分解性ポリマー(高分子)素材を開発した。素材を構成するポリマーの鎖に特殊な分子を組み込み、2種類の性能を同時に高めた。廃棄した服の繊維素材に組み込んで再生するなどの用途を想定しており、5年以内の実用化をめざす。

大阪大学

生分解性ポリマーは自然界の微生物が最終的に水と二酸化炭素(CO2)に分解することができる。海洋に漂うマイクロプラスチックなどが問題となるなか、自然環境への負荷が低い素材として注目を集める。ただ、分解しやすいようにポリマーの結合を弱めると強度が低くなることが課題だった。

大阪大の宇山浩教授などは、脂肪の分解酵素である「リパーゼ」が分解する生分解性ポリマー材料を開発していた。この材料は固定された分子の結合によってポリマー鎖同士が結ばれている。研究チームは今回、リング型の特殊な分子を組み込んで、ポリマーが可動式で結合するように作り替えた。

すると引っ張るなどした際にかかる力が分散され、強度が従来の8倍に向上した。スーパーの袋などに使われるポリエチレンと比較しても強度は1.2倍という。物理的な力には強くなった一方、リングがポリマー同士の相互作用を弱め、酵素による分解速度は20倍に向上した。

開発したポリマー材料は酵素で分解したのち、ほかの繊維に組み込める。廃棄した服の繊維素材などに組み込み、より強度の高い服として再生することなどを想定している。成果は米化学誌「ケム」(電子版)に掲載された。

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