インターネット上のプラットフォームを介した物やサービスの購入が日常生活に定着するなか、顧客に届ける人の実態に迫ったドキュメンタリーDVDが完成した。便利な生活を陰で支える配達員たちの過酷な労働の実態に迫っている。【東海林智】
タイトルは「Amazon配達員~送料無料の裏で」。完成した11月20日には東京都千代田区で試写会が開かれ、映像化を支援するため寄付をした人など、オンラインを含め100人が参加した。
撮影した監督は、食事を宅配するプラットフォームビジネスやブラック企業の実態を取り上げてきた映像作家の土屋トカチさん。ネット通販大手「アマゾンジャパン」の商品を配達する人たちを約2年間かけて取材し、日々の仕事の過酷さや働く人の抱える問題を追った。
作品では、神奈川県横須賀市や長崎市でアマゾンから配達の委託を受けた運送会社と個人請負契約を結んだドライバーに密着した。ドライバーはアマゾンのアプリの指示を受けて業務に従事する。しかし、個人請負のため労働者としては扱われず、けがをしても労災保険の対象とならず、残業代が支払われないこともある。
そうした働き方を描きながら、ドライバーたちが「私たちは労働者だ」と主張し、会社と労働条件を話し合うために労働組合を結成する動きを追いかけた。
密着を通じてドライバーからは「1日200個以上の配達を求められた」「重い荷物を1個運んで67円。郵便はがき(85円)より安い」といった証言を引き出した。
横須賀市の60代の組合員は、配達中に転倒して腰椎(ようつい)圧迫骨折の重傷を負った。運送会社で仕事中に事故があったとして労災補償を申請したところ、労働基準監督署は業務のやり方の労働者性を認定し、昨年10月に労災申請を認めた。
20日の上映会では、当事者が壇上で現状を語った。組合員は「送料無料の裏にはひどい労働実態がある。私たちはロボットではない。人間らしく働きたい」と訴えた。菅俊治弁護士は「労働者なのに労働者扱いされないという壁を突破しなければならない。全国で起きている問題であり、労組を大きくして対応したい」と話した。
DVDは年内に販売を始める。問い合わせはアジア太平洋資料センター(パルク)、03・5209・3455へ。
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