三菱鉛筆が主力ボールペン「ジェットストリーム」で、インクの中身を大幅に変えた商品を初めて販売した。こだわったのは従来品よりもさらに滑らかな書き心地だ。滑らかさや軽やかさが消費者に受け入れられやすくなっていると開発者が感じたことが、新製品誕生のきっかけの一つだった。
インクの中身を大幅に変えたのは初の試みだ

ジェットストリームは2006年に発売した主力のボールペンブランド。年間で1億本以上を売り上げており、国内外でも人気の商品だ。3月に発売した「ライトタッチインク」はインクの中身とデザインを大きく変更した。従来品よりも書き心地を滑らかにし、消費者が選べるようにした。

商品開発本部商品第2グループ係長の百田崇人氏は約5年間、ジェットストリームの開発に携わってきた。通常のジェットストリームを発売した当時は、インクの滑りが良すぎて「違和感がある」との声が多かった。だが時間がたつ中で定番品として受け入れられていった。この経験から、今よりもさらに滑らかなインクが将来売れるのではないかと予想した。

開発に携わった百田崇人氏は、より滑らかな書き心地のペンに需要があると考えた

社内にはジェットストリームのヘビーユーザーが多い。試作品を試してもらったところ好評だった。紙のザラザラ感を感じさせないよう粘度を調整し、筆記抵抗を減らしたインクを開発した。

書き心地を軽やかにしただけでは、紙の種類によってはペンが滑ってしまい、書きにくくなってしまう。こうした事情も念頭に置きながら適切なインクの粘度を導き出していった。

さらに、消費者の好みの変化を感じ取ったことも背景にある。百田氏はある日、電子レンジのダイヤルが以前よりも滑らかに回せるようになっていることに気づいた。「社会全体が軽やかなものを好むようになっているのではないか」と感じたことも、開発を後押ししたという。

ライトタッチインクを採用したジェットストリーム。左の4本が単色(黒)。右の3本が多色

モノトーンのデザインを採用した点も、従来の製品と異なるポイントだ。フォルムは従来のモデルを踏襲しつつ、色合いなどのデザインを変更することで、「ジェットストリームらしさを守りつつ進化させた」(百田氏)。

単色のペンは1本220円。発売時は黒インクのみだったが、9月には赤インクや青インクのペンを数量限定で追加した。黒、赤、青、緑とシャープペンシルが付いた多機能ペンも1430円で販売している。

海外では既に韓国で売り出しており、他の国でも販売も検討。同社は高価格帯の「ジェットストリーム プライム」をはじめ、多様なモデルを展開してきた。今後も書き心地を訴求する商品の開発に取り組む。(柴田唯矢)

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