現在は第5世代、世界的に人気は健在
2000年前後に青少年だった世代の多くは、プレイステーション(PS)を楽しんだ経験があるだろう。誕生から30年で現在は5代目。モノトーンを基調とした本体や「△○×□」マーク入りの十字ボタンはそのままに、時代に合わせてアップデートしてきた。
ブラジル代表ロナウド選手(当時)が当人の名を冠した「Ronaldo V-Football」を発売前に体験=2000年2月17日、フランス(ロイター)
スマートフォン向けゲーム全盛の時代となったが、PSは独占タイトルやサードパーティーの超大作ソフトを充実させ、今なおコアなゲーマーから熱烈に支持される。歴代5機種のセールスは世界累計5億台を超え、国際的にはいまだ据え置き型機の本流だ。歴代ハードの進化を追い、その魅力に迫ってみよう。
新機種の発売日には家電量販店にファンが行列=2006年11月11日、東京(ロイター)
プレイステーション(1994年発売):本格3Dゲーム機の草分け
当時としては大容量のCD-ROMをメディアに採用(AFP=時事)
ドット絵を主体とする2Dから3Dの時代へ―1994年はゲーム史の大きな節目となった。その潮流をけん引したのが、ほぼ同時期に発売された初代プレイステーション(PS1)とセガサターン。ソフトメーカーやゲーマーを巻き込んだ両陣営のバトルも熱かった。ゲームセンターで人気だった3D格闘ゲーム『バーチャファイター』擁するセガが先行したが、PS1は2大人気ロールプレイングゲームの最新作『ファイナルファンタジーⅦ』『ドラゴンクエストⅦ』を独占タイトルにしたことで勝利を収めた。
PS1の3Dグラフィックは衝撃的だった。ハリウッド映画にまでなった『バイオハザード』や『グランツーリスモ』シリーズも、PSでなければ大ヒットし得なかっただろう。3年間で対応ソフトは1000タイトルを数え、出荷累計1000万台を突破した。
プレイステーション 2(2000年発売):DVDブームに乗って大ブレーク
2代目からは縦置き可能に=1999年9月13日、東京(時事)
2000年に発売されたPS2は3Dグラフィック機能をさらに進化させ、リアルタイムの物理演算も可能となった。要は「現実のモノの動きをより緻密に再現」できるようになり、高価な業務用ゲーム機やパソコンさえもしのぐ表現力を持ったのだ。それでいて、PS1用ソフトも遊べる親切設計。
しかし、何よりの魅力はDVD-Videoの再生機能。専用プレーヤーが5万円以上の時代に4万円ほどとお得感があり、ビデオファンの購買意欲も高めた。同年にDVD化された映画『マトリックス』の大ヒットが追い風となり、ソフトの充実と低価格化も相まって市場は一気に拡大。「DVDを普及させたゲーム機」とも呼ばれる。
そして、『FF』『DQ』の最新作もPS2の大ブレークを後押しした。12年の製造終了までにセールスは全世界累計1億5500万台を超え、ゲーム史に金字塔を打ち立てた。
プレイステーション・ポータブル/ プレイステーション・ヴィータ(2004年/11年発売):初の携帯型もブームを呼んだ
メディアが小型化、無線LANに対応したPSP=2004年7月12日、東京(ロイター)
3G回線対応などネットワーク機能を強化したPS Vita=2011年6月7日、米国(ロイター)
ソニー初の携帯ゲーム機PSPは、小さな筐体(きょうたい)ながらPS2並みのグラフィックを実現。ソフトは独自開発した光学ディスク「UMD」を採用し、音楽・動画ソフトの携帯プレーヤーにもなった。『モンスターハンター ポータブル』シリーズの大ヒットにより、友達同士でPSPを持ち寄って協力プレイするのがブームになった。
より高性能なPS Vitaが登場した2011年は、すでにスマートフォンが普及してアプリでゲームをする時代になっていた。タイトル数も減り、PSPほどのヒットには至らなかった。
プレイステーション 3(2006年発売):ハイスペック化も普及は緩やか
HDD容量に応じた価格設定に=2006年11月13日、米国(ロイター)
IBMや東芝と共同開発した高性能プロセッサーや強化されたネットワーク機能も搭載し、DVDに加えてブルーレイに対応するなど、PS 3は並外れた性能を誇った。その反面、製造コストがかさみ、最安値の20ギガバイト版で6万円以上とPS2より大幅値上げ。しかも初期は生産が遅れたため「高価で品薄」となってしまった。
さらに、独自設計のプロセッサーはプログラムが難しく、ゲームソフト不足にもつながった。それでも改訂モデルは価格を抑えたこともあり、フルハイビジョン・テレビが普及するにつれて高解像度対応のPS3は売り上げを挽回。世界的な人気クライムアクションの新作『グランド・セフト・オートⅤ』の好調も追い風になった。
プレイステーション 4(2014年発売):SNSやVRとの親和性を強化
過去のPSソフトもネット経由で遊べるように(時事/ソニー・コンピュータエンタテインメント提供)
一般的なパソコンに近い設計となり、ゲームソフトを開発しやすくなったのがPS4だ。競合するマイクロソフトのXbox Oneよりスペックが高く、ソフトも充実。PS3よりも大きく販売台数を伸ばした。
最大の特徴は、ネットワーク機能を強化し、プレイ動画を「シェア」できるなどSNSやゲーム配信との相性が良かったこと。別売りのプレイステーション VRを接続すれば、ゲームの世界に没入して楽しむことができた。16年には、4Kに対応した高画質版のPS4 Proも登場。どんどん進化するゲームの映像表現に対応した。
プレイステーション 5(2020年発売):全機能が進化、ダウンロード時代へ
4K映像&立体音響、五感に訴える新型コントローラーなど各段に進化=2023年4月30日(Nikos Pekiaridis via Reuters Connect)
現世代機のPS5はグラフィック性能などがPS4の数倍となり、ロード時間も大幅に短縮。コントローラーは初期からの特徴の振動機能がより微細で多彩になり、スピーカーとマイク内蔵に刷新するなど、すべてがパワーアップした。また、ディスクドライブのないデジタル・エディションも登場。ゲームはダウンロード販売の時代へとシフトした。
しかし、コロナ禍のまっ最中に発売したため、製造が滞る中で巣ごもり需要が高まり、なかなかユーザーの手元に届かない状況が続いた。ようやく2023年初めに品薄が解消され、日本を含めた全世界に一気に普及した。
ソニー系列の米国ソフトメーカーPlayStation Studiosブランドからは、鎌倉時代の蒙古襲来をテーマにした冒険アクション『Ghost of Tsushima』や、SFシューティング『HELLDIVERS 2』も大ヒットした。24年11月7日には上位モデルPS5 Proが登場し、11月21日の30周年記念版は限定1万2300台を事前予約で完売。今なお熱く支持されている。
海外での展開―拠点は米国へ、新興国も視野に
パリ・ゲームウイーク2024でPS5をプレイする子ども(Abdullah Firas/ABACA via Reuters Connect)
歴代のPSは欧米を中心に広く受け入れられてきたが、近年はより海外市場を強く意識するようになった。転換期は2016年。日本でソニーのゲーム事業を統括していたソニー・コンピュータエンタテインメントが、ネットワークサービス部門と統合してソニー・インタラクティブエンタテインメントとなり、本社を主戦場の米国に移転したのである。
コントローラーの仕様変更は、海外シフトの象徴といえる。国内では初代から決定ボタンは「○」マークだったが、PS5から世界標準に合わせて「×」になった。
またソニーグループは23年、中東や北アフリカ、インド、中国でソフト開発に取り組むゲーム会社やクリエイターを支援する「ヒーロープロジェクト」を開始。ゲーム新興国の才能を発掘し、世界的ヒットにつなげることで、プレイステーションのさらなる版図拡大を狙う。
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