トランプ次期米大統領は2日、日本製鉄によるUSスチール買収を阻止する考えを明言した。自らが運営するソーシャルメディア(SNS)に「大統領としてこの取引が実現しないよう阻止するつもりだ」と投稿した。「米国第一主義」を掲げるトランプ新政権の下で、買収が破談となる公算が大きくなった。
トランプ氏はSNSに「かつて栄華を誇ったUSスチールが外国企業に買収されることに全面的に反対する。(外国企業とは)今回のケースでは日本の日本製鉄だ」と明言した。
さらに「税制優遇や関税を通じて、我々はUSスチールを再び強く偉大にする。それは速やかに実現するだろう」と述べ、政府支援によるUSスチール強化に意欲を示した。
その上で、トランプ氏は投稿を「バイヤー(買い手)は警戒せよ!」との言葉で締めくくった。
日鉄の買収計画には、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対姿勢を示し、大統領選でUSWの支持を取り付けたかったバイデン政権は買収に難色を示していた。
買収計画によって国家安全保障上の脅威が生じないか調査してきた対米外国投資委員会(CFIUS)は、年内に審査期限を迎える。
来年1月20日のトランプ氏就任前のタイミングだが、「大統領選で敗北したバイデン政権が(買収の可否を)決断するメリットはない。期限を再延長し、トランプ新政権に判断を委ねる」(大手シンクタンク)との観測が出ていた。
日鉄の買収計画に対し、「米製造業の復活」を公約に掲げたトランプ氏は、大統領選期間中、USスチール買収を阻止する考えを繰り返し表明していた。
日鉄は2023年12月に約141億ドル(約2兆円)でUSスチールを買収する計画を発表。「両社にメリットのある合理的な買収計画」(エコノミスト)との評価が出ていたが、米政治事情に振り回された揚げ句、破談になる見通しが強まった。【ワシントン大久保渉】
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