新東名高速道路で実証実験
この実証実験は、国やトラックメーカー、システム開発会社などが参加して先月から新東名高速道路で始まり、4日は、浜松サービスエリア内でトラックが決められたスペースに自動運転で駐車したり、発進したりする様子が報道陣に公開されました。
実証実験が行われるのは、静岡県の駿河湾沼津サービスエリアと浜松サービスエリアのおよそ110キロの区間で、今後は国が道路側に設置するセンサーや通信機器を活用し、トラック側にほかの車の走行状況を伝えて、サービスエリアから本線に合流させる実験や、交通事故や工事規制などの情報を伝える実験も行います。
また、実用化に向けて、トラックの走行位置や自動運転システムの状況を遠隔で監視します。
国土交通省の道路交通管理課の北城崇史課長補佐は「人手不足解決のひとつとして自動運転が期待されているので実用化に向けて今後も実証実験を続けて解決に貢献したい」と話しています。
国は今後、東北自動車道でも実証実験を行う計画で、再来年度以降、東京、大阪間など主要な高速道路を念頭にドライバーがいない状態で自動運転を行う「レベル4」の実現を目指しています。
開発進む“自動運転トラック”
国が高速道路の自動運転に向けてインフラ整備を進める中、物流大手と自動運転システムを手がけるベンチャー企業は、ドライバーがいない状態で自動運転を行う大型トラックの開発を進めています。
物流大手の「佐川急便」と「セイノーホールディングス」、それに自動運転システムを開発している「T2」の3社は2027年の実用化を目指して自動運転の大型トラックの開発を進めています。
物流を担うトラックは荷物の重さや積み方によって、車体の重心が変わるため、自動運転でハンドルの制御を行う際も重さの違いなどを考慮する必要があります。
このため会社では茨城県のテストコースで荷物の重量を変えながら試験走行を重ね、適切なハンドルの制御方法を探ってきました。
例えば、荷物を積んでいない状態では問題なくコースを走行していた自動運転のトラックに重さ5トンの荷物を積んでテスト走行をしてみると、蛇行してしまいました。
そこで重量の変化にあわせてハンドルを制御するプログラムを調整し、蛇行しないようにしました。
こうした改善を重ねたうえで、ことし10月から東京と大阪を結ぶ高速道路でドライバーが乗る形で実証実験を行っています。
先月29日の実証実験では、荷物の代わりに重さ3トンのコンクリートのブロックを荷台のやや前方に積んで走行し、蛇行することなく走行できているかなどを検証しました。
今月からは重量を5トンに変えて新たなデータを取得し、最適な制御ができる自動運転のソフトウエアを開発するということで、来年1月からは実際に荷物を積んで走行し、量や種類を変えていくことで精度を高めたいとしています。
システム開発のベンチャー企業「厳密な制御求められる」
ベンチャー企業でシステム開発を担っている藤巻由太グループリーダーは「荷物を積んでいる時の方がより慎重に先読みした厳密な制御が求められる。トラックドライバーに近い運転制御ソフトの開発を目指しているので、荷物を傷めず安心した状態でお客さまに届けることを実現していきたい」と話しています。
一方、提携する物流大手は、トラックの自動運転を人手不足の軽減につなげたい考えです。
この会社では現在、神奈川県と大阪府を結ぶ高速道路を主力のルートとして、1日に550便のトラックを運用していますが、この区間で自動運転が実現すれば、長時間労働の軽減や今よりドライバーが少ない体制でも配送が可能になると期待しています。
「セイノーホールディングス」傘下の中核企業「西濃運輸」田口幸太郎副社長は「ドライバーの確保は年々厳しくなってきていて、自動運転「レベル4」が実用化すれば業界にとって救世主だと思う。実用化によって物流を効率化できれば、運ぶ量を増やせるため、人口減少に直面する日本全体に貢献できる」と話しています。
実用化に向けた課題は
時間外労働の規制強化に伴い、トラックドライバーの不足は深刻化していて、6年後の2030年度には34万人に達し、輸送能力では34%不足するという推計があります。
人手不足の軽減に向けて、官民で取り組む対策の1つがトラックの自動運転です。
去年4月には改正道路交通法が施行されてルートや速度など特定の条件のもとでドライバーが不要となる「レベル4」の自動運転が解禁され、実用化に向けた機運も高まっています。
一方で、実用化の課題となるのが安全性を高める技術を確立することに加えて、万が一、事故が起きた時の法的責任に関するルール作りです。
「レベル4」ではドライバーに代わって、自動運転のシステムが周囲の状況を把握して走行し、緊急時には自動停止などを行うため、事故が起きた場合、誰がどう責任を負うかを明確にする必要があります。
現状では、関係機関の許可を得た上で特定の地域や区間で運行主体の事業者や自治体が責任を負う形で実証実験が行われていますが、自動運転の本格的な普及に向けては法的責任や補償についてのルール作りが必要です。
事故の原因に応じて、自動運転車を運行する事業者、開発したメーカーなどが刑事や民事上の責任を負うことも想定されていて、警察庁や国土交通省などの関係省庁で、それぞれ有識者も交えた議論が進められています。
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