ユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行(ECB)=独西部フランクフルトで2017年10月27日午前、三沢耕平撮影

 欧州中央銀行(ECB)は11日の定例理事会で、主要政策金利を5会合連続で据え置くことを決めた。会合では一部理事から利下げの環境が整いつつあるとの発言も出るなどし、ラガルド総裁は会合後の記者会見で条件付きながら次回6月会合以降の利下げの可能性に初めて踏み込んだ。

 ECBは、賃上げなどによる物価上昇(インフレ)の再加速を警戒し、民間銀行が資金を借り入れる際の主要政策金利を4・5%、民間銀行が資金を預ける際の中銀預金金利を4・0%で維持した。

 一方で、欧州連合(EU)統計局によると、ユーロ圏の3月の消費者物価指数上昇率は前年同月比2・4%で、3カ月連続で縮小。変動の大きいエネルギーや食料品を除いたインフレ率も2022年3月以来、初めて3%を下回った。ラガルド氏は会見で「インフレが中期物価目標の2%に向かい持続的に収束する確信が深まれば、現在の金融引き締めの水準を低下させることが適切になる」と利下げに言及した。

 ラガルド氏は、賃金動向の影響を受けやすいサービス部門の3月のインフレ率が前年同月比4%の高い水準にとどまっていることなどから、5月に出そろう欧州各国の24年1~3月期の賃金のデータやECBが6月に発表する経済予測で物価上昇圧力の低下を確認したうえで、利下げを判断する意向を示した。

 ラガルド氏は米国の金利動向による影響にも言及した。10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回って上昇したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始は7月以降にずれ込むとの観測が広がっている。

 ECBが6月6日の次回会合で利下げに踏み切り、米国の金利据え置きが続けば、金利差の拡大からドル高・ユーロ安に振れ、欧州の輸入物価を押し上げる懸念がある。

 ラガルド氏は「私たちはFRB次第ではなくデータ本位で政策を決める」と説明。ユーロ圏の物価上昇率が米国より収束傾向にある点や、23年10~12月期まで6四半期連続でプラス成長の米国と異なり、ユーロ圏の成長率が0%付近で低迷していることを念頭に、「ユーロ圏のインフレの性質は米国のインフレの性質とは異なる」と述べ、FRBの政策に歩調を合わせる必要はないとの認識を示した。【ブリュッセル宮川裕章】

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