「カーライフの民主化を実現したい」と話す藤堂社長

自動車整備工場のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を手がけるcars(カーズ、奈良市)は、日本政策金融公庫と南都銀行の協調融資で11億円を調達した。人工知能(AI)を活用したシステムの開発費用などに充てる。東京の開発拠点の人員も増やす。事業を成長軌道に乗せ、新規株式公開(IPO)の準備を本格化する。

日本政策金融公庫奈良支店は「スタートアップ支援資金」として7億円を融資。南都銀行も、環境や社会課題の解決を目指す企業向けの「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を通じて4億円を拠出した。

カーズは自動車整備工場が顧客情報や車両の整備状況を一元管理するクラウド型システム「cars MANAGER(カーズ マネージャー)」を提供している。タブレット端末などで手軽に作業できるのが特徴だ。整備現場での記録作成の負担軽減や顧客への適格な営業活動などに生かすことができる。

調達した資金で、システムの大規模化やAIによるサービス拡張に向けた開発体制を強化する。システムの導入先を広げるための営業活動にも活用する。さらに蓄積したデータをもとに車両の購入や売却ができるプラットフォームの開発や、異業種とのサービス連携も進めていく考えだ。

同社は奈良県天理市で自動車整備業として1960年に設立した。2019年に「第2の創業」を掲げてカーズマネージャーの展開を事業の中核に据えた。22年に社名をファーストグループから現在のカーズに変更した。従業員数は約160人。

自動車整備業界では人手不足や事業承継が課題になっている。同社は当初、業績不振の事業者のM&A(合併・買収)を行っていた。こうした経営支援のあり方から、「カーズマネージャーの導入を通じて売上や利益を伸ばし、自力で経営を続けることができるよう後押しをする」(藤堂高明社長)。

中古車販売業界で不正問題が相次ぐことも踏まえて、藤堂社長は「消費者にしっかり意思決定してもらえる材料を提供しつつ、事業者も生き残っていけるようにしたい。カーライフの民主化を実現したい」と話す。

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