目次

  • JR東日本 過去に5回の運賃改定

  • コロナ禍と物価や人件費上昇 収益を圧迫

JR東日本は、人口減少が続き将来の利用者の伸びが期待できない中、鉄道事業を安定的に維持する資金を確保する必要があるとして、6日、国に対して運賃の値上げを申請しました。

申請では、2026年3月に運賃改定を行い、全体の値上げ率は平均で7.1%となっています。

JR東日本のエリア全体で切符の初乗り運賃は10円値上げし、普通運賃は平均で7.8%の値上げになるとしています。

山手線の切符の初乗りは、いまの150円から160円となります。

また、定期運賃も値上げされ、「通勤定期」は平均12.0%、「通学定期」は平均4.9%となっています。

一方、運賃改定にあわせて、首都圏の主要な区間で運賃を低く抑えていたいまの運賃体系も見直し、そのほかの区間と比べて値上げ幅は実質的に高くなる形となっています。

JR東日本の切符や定期の値上げは、首都圏の一部の区間で「バリアフリー料金」の上乗せを行った2023年3月に続いてとなりますが、全面的な運賃の値上げは消費税の導入や増税の際を除くと1987年の会社設立以来初めてとなります。

JR東日本の申請に対し、国は、運輸審議会で認可に向けた審査を行うことにしています。

鉄道運賃をめぐっては、JR北海道が平均7.6%の値上げを、JR九州が平均15%の値上げをいずれも2025年4月に行うなど値上げの動きが相次いでいます。

JR東日本 過去に5回の運賃改定

JR東日本は、これまで5回運賃改定を行ってきましたが、全面的な運賃の値上げは消費税の導入や増税の際を除くと1987年の会社設立以来初めてとなります。

▽最初の運賃改定は、3%の消費税が導入された1989年4月で、普通運賃はおよそ3%引き上げられました。
このとき山手線の初乗り運賃は120円のまま据え置かれました。

▽1997年4月、消費税率が5%になった際には、普通運賃はおよそ2%上がり山手線の初乗り運賃は、プラス10円の130円に。

▽2014年4月、消費税率が8%になった際には、普通運賃はおよそ3%上がり、初乗り運賃は、山手線で10円値上がりして140円になりました。

▽2019年10月、消費税率が10%になった際には、普通運賃はおよそ2%引き上げられ、山手線の初乗り運賃は据え置かれました。

▽2023年3月には、オフピーク定期券の導入に伴って運賃改定され、首都圏の一部の区間で通勤定期が見直されたものの、普通運賃や通学定期は据え置かれました。
ただ、このときには、転落防止のホームドアなどの駅のバリアフリー化を進めるために、首都圏の一部の区間を対象に、「鉄道駅バリアフリー料金制度」も導入されました。

導入によって、普通運賃に一律で10円上乗せされたことで山手線の初乗りは150円となりました。
同時に通勤定期も引き上げられました。

コロナ禍と物価や人件費上昇 収益を圧迫

コロナ禍での利用客の減少と物価や人件費の上昇は、各社の鉄道運賃の相次ぐ値上げにつながっています。

2022年1月には、私鉄大手の東急電鉄が平均で12.9%の運賃値上げを申請し、その後も近畿日本鉄道やJR四国、名古屋鉄道などが相次ぎ値上げを申請しました。

リモートワークが定着し、コロナ禍前の水準まで利用客の回復が見込めないほか、物価や人件費の上昇が収益を圧迫していることが各社の相次ぐ値上げの動きにつながっています。

国が2024年4月に、運賃計算の基準を変更して以降では、JR北海道が6月に平均7.6%の値上げを国に申請し、10月に認可されたほか、JR九州も、7月に平均15%の値上げを申請し、11月に認可されています。

鉄道各社にとっては、国の基準の見直しで値上げの申請のハードルが下がった形となり、値上げの動きはさらに広がる可能性があります。

背景に国の基準見直し

JR東日本が全面的な値上げに踏み切るのは、国が27年ぶりに鉄道の運賃を定める基準を見直したことが大きなきっかけとなりました。

鉄道の運賃は、利用者の過度な負担を避けるため、事業者の申請に基づき国の運輸審議会で審査する「認可制」となっています。

運賃の上限は、経費などの原価に一定の利益を加えた「総支出」を超えない範囲で設定することが求められます。

国は、この計算の基準を2024年4月、27年ぶりに見直しました。

鉄道事業を取り巻く環境が大きく変化しているとして、設備投資の費用や人件費、災害で破損した施設の修繕費用などをより弾力的に原価に盛り込めるようにしました。

JR東日本は山手線など収益性の高いいわゆるドル箱路線を抱えていますが、コロナ禍で落ち込んだ利用者の回復が遅れ、2023年度の運輸事業の売り上げは、1兆8500万円あまりとコロナ禍前の2019年度と比べて9割ほどにとどまっています。

また近年では、物価や人件費の上昇などでコストが増加し利益を圧迫していました。

こうした中、ホームドアの設置をはじめとした駅のバリアフリー化や、鉄道施設の耐震補強など安全面の設備投資を加速させ、サービスを維持していくためには運賃の値上げが必要だとしています。

ただ、鉄道は、通勤・通学などで日常的に利用する公共交通機関としての役割が大きく、運賃の値上げに利用者の理解が得られることが必要となります。

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