セミコン・ジャパンのオープニングセッションで講演する甘利明・前衆院議員(11日、東京都江東区)

半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」が11日、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開幕した。オープニングイベントに登壇した甘利明・前衆院議員(半導体戦略推進議員連盟名誉会長)は「先端半導体の生産を台湾積体電路製造(TSMC)1社が担うことが世界最大のリスクだ。ラピダスの意義はそこにある」と語った。

TSMCは技術で先行し、米エヌビディアをはじめ人工知能(AI)半導体など先端品の受託生産をほぼ独占している。甘利氏は「台湾海峡が封鎖されれば、先端半導体のほとんどは供給が止まる。リーマン・ショックの何倍もの衝撃がある」と話した。

半導体チップを組み立てる後工程の技術革新にも触れ「3次元実装などによりデータの転送速度と電力消費が改善する。(基板に回路を書き込む)『前工程』以上に、変化をつくる役割に変わる」とした。

同じくオープニングイベントに登壇した半導体の国際業界団体SEMIのアジット・マノチャ最高経営責任者(CEO)は「AIや、量子コンピューティングの波により半導体市場は40年ごろに2兆ドルを超える」と予測した。

SEMIによると27年までの今後3年で世界で108工場が新設される。地域別ではアジアが78カ所と最多で、うち11カ所が日本だ。米州は18カ所、欧州・中東地域は12カ所で計画が進む。30年に向けてはさらに50の工場新設が期待されるという。

石破茂首相はビデオメッセージで「半導体投資を全国的に展開していかなければいけない。政府も全力でサポートする」と話した。

セミコン・ジャパンで講演する理化学研究所の五神理事長(11日、東京都江東区)

理化学研究所の五神真理事長は「省電力化技術を民主化するには破壊的なイノベーションが必要だ。光電融合やシリコンを超える材料開発などの技術の方向性を皆で議論し、効率的に進めるべきだ」と訴えた。

講演後に行われたトークセッションにはNTTの澤田純会長や、27年に最先端半導体の量産を目指すラピダスの東哲郎会長、デンソーの加藤良文最高技術責任者(CTO)が登壇した。

セミコン・ジャパンのトークセッションに登壇したNTTの澤田純会長(11日、東京都江東区)

東氏は「半導体は電力の無駄が多い汎用チップから、用途に応じて(機能を特化させた)専用チップの時代がくる。設計のイノベーションが起き、電力消費は5分の1になる」と訴えた。

光電融合の実用化に向けた発言もあった。澤田氏は「(極めて薄い膜で構成した光源を利用する)メンブレン型の半導体レーザーの実装で、ラピダスと共同研究したい」と意欲を示した。

加藤氏は「省電力化において(電圧制御用の)パワー半導体の革新に期待している。自動車産業が市場をけん引し、データセンターへの搭載も進む」との見方を示した。人材採用についても「自動車産業としてはこれからは専門外や異なるバックグラウンドをもつ優秀な学生を広く採用していきたい」と語った。

(向野崚)

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