トヨタに配慮しベアの統一要求は見送ってきた(写真は福岡県宮若市)

自動車業界の労働組合でつくる自動車総連は11日、2025年春季労使交渉で賃上げ要求の目安額として月1万2000円を示す方針を発表した。具体的な金額を示すのは7年ぶり。自動車産業は影響力が大きく、かつては賃上げ相場をけん引してきた。目安を明確に示し、中小企業の賃上げを先導する。

同日に開いた中央執行委員会で決めた。上部団体の金属労協は25年交渉で賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を月額1万2000円以上とする要求方針を決めた。自動車総連もこの金額を参考にしたようだ。

自動車総連は今回、賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の統一要求ではなく、交渉する際の「目安」として金額を決めた。指針は部品メーカーなど中小労組が会社と交渉する際の参考にするため、指針でも賃上げを波及させる効果が見込めると判断した。

自動車総連は19年の春季交渉からベアの統一要求を見送ってきた。背景には最大手のトヨタ自動車への配慮がある。

トヨタの労組は19年から具体的な要求額を示すのをやめた。企業の規模や賃金制度が異なるため一律の設定が難しいとの問題意識からだった。自動車総連もトヨタの方針に理解を示し、統一要求を見送ってきた。

ただ、一部の中小労組から何を基準に交渉すればいいか分からないとの声が上がっていた。物価上昇が続き、賃上げペースが追いつかない状況が続く。中小に賃上げを浸透させるためには、一定の目安額が必要だとの判断に傾いた。

自動車業界では自動運転や電気自動車(EV)の普及に伴う変革期を迎えている。米国や中国のメーカーに出遅れるなか、優秀な人材の確保が急務となっている。経営環境が厳しいなか、自動車業界全体の競争力の底上げを狙う。

労働組合の中央組織である連合は10月、25年交渉で全体の賃上げ率を24年と同じ「5%以上」、中小は「6%以上」とすると発表した。金属労協の傘下ではJAMが25年交渉でベアの要求基準を1万5000円以上とする方針を発表している。

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